“アスリート・安井友梨”の矜持 全治1年を3週間で乗り越え、8連覇のステージ袖で記者が見た姿
近年、人気を集めるボディビル・フィットネス界で、年齢別・身長別の日本一を決めるコンテスト、オールジャパン・マスターズフィットネス&オールジャパン・フィットネス・チャンピオンシップスが9、10日、栃木県総合文化センターで行われた。最年少は17歳から最年長の69歳までステージ上で華やかに肉体美を競った2日間。特に話題を集めたのが、ビキニフィットネスの女王・安井友梨だった。35歳以上39歳以下160センチ超級で優勝し、翌日の一般クラス163センチ超級で前人未踏の8連覇を達成。大会3週間前に大怪我を負い、ドクターストップをかけられた大会のステージ袖でアスリートの矜持を見た。(文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)
ビキニフィットネスの女王・安井友梨、ドクターストップをかけられた大会で日本一
近年、人気を集めるボディビル・フィットネス界で、年齢別・身長別の日本一を決めるコンテスト、オールジャパン・マスターズフィットネス&オールジャパン・フィットネス・チャンピオンシップスが9、10日、栃木県総合文化センターで行われた。最年少は17歳から最年長の69歳までステージ上で華やかに肉体美を競った2日間。特に話題を集めたのが、ビキニフィットネスの女王・安井友梨だった。35歳以上39歳以下160センチ超級で優勝し、翌日の一般クラス163センチ超級で前人未踏の8連覇を達成。大会3週間前に大怪我を負い、ドクターストップをかけられた大会のステージ袖でアスリートの矜持を見た。(文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)
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アスリートは得てして、二つの顔を持っている。
表舞台では、勝負師の魂が宿り、常に戦う表情をしている。しかし、その舞台を降りれば、プレッシャーや不安、抱えていたものがあふれることもある。それを隠し、勝負に徹するのがアスリートという生きものである。
ビキニアスリート・安井友梨もそうだ。
近年、「ビキニの女王」の異名を取り、海外選手にも見劣りしない173センチの骨格と世界一細いと評される50センチ台前半のウエストで、2年連続世界選手権準優勝を果たすなど、第一人者として活躍。「情熱大陸」で特集され、年間1000個以上を食べるおはぎマニアとしてもメディア露出が増えつつある。
何よりも安井をアスリートたらしめるのが飽くなき情熱である。
大会3週間前、ジムのロッカーから15キロあるトレーニング器具が誤って左足に落下。親指を粉砕骨折した。医師から「全治には1年かかるだろう」「3週間後にヒールを履くなんて無理」と即手術を勧められた。ただでさえ、ここから大会に向け、減量・トレーニングとも激しく追い込む時期でもあった。
にもかかわらず、彼女はステージに立った。それだけでも奇跡に近いのに、なおかつ勝った。
優勝が決まると感極まり、涙を流した。輝くティアラを乗せ、眩いスポットライトを浴びる。しかし、戦いを終えてステージ袖にはけた直後。安井はヒールを脱いで座り込み、暗がりの中で苦悶の表情を浮かべた。
骨折した左足親指の付け根は内出血の痕か、浅黒く変色。「今も寝る間も24時間ずっとずきずき痛い。昨日(初日の競技後)は足が倍くらいに腫れちゃって……」。いかに深刻なダメージを隠していたかが窺い知れる。
「怪我をした時には(出場は)99.99%無理と思っていました。でも、もう39歳。(年齢的に)来年や再来年を考えられない。今年1年、引退をかけて世界一を目指してやってきた。来年はないと思っているので。骨折しても、たとえ来年に歩けなくなっても今年は絶対に出ると思っていました」
これが、ドクターストップをはねのけてまで出場した理由。涙ながらに語った悲壮な決意に、アスリートとしての矜持を感じた。