世界で一番「クライミングを愛している人でありたい」

　より高く、より難しい課題をクリアしたいと練習し、「ヒールフック」など技術にも磨きをかけた。それが体格差をカバーし、世界有数のクライマーへと至らしめた。

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　繰り返しになるが、森の根幹にあるのは「クライミングが楽しい」だ。やらされてきたわけではなく、意識的に楽しもうとするのでもなく、ただ楽しいから打ち込む。だから練習も、自分を磨くことも苦にならない。

　それこそ森秋彩の、最大の強みである。

「どんなクライマーになりたいか、ですか？　クライミングをやっている人の中で一番クライミングが大好きで、クライミングを愛している人でありたいです」

　その答えもまた、クライマー森秋彩の像を明確に伝えていた。

　そして、高校を卒業してプロになる選手も少なくない中、昨春、筑波大学に進み、競技と両立を図ってきた。進路の選択も、森ならはでの考え方に裏打ちされていた。（後編へ続く）

■森 秋彩（もり・あい）

　2003年9月17日生まれ。茨城県出身。小学1年生の時にクライミング競技を始めるとすぐに才能を開花させ、12歳で出場したリード・ジャパンカップで歴代最年少優勝を果たす。2019年8月の世界選手権では得意のリード種目で15歳にして銅メダルを獲得。22年4月に筑波大学へ進学すると、同年9月には3年ぶりに出場したワールドカップのリード女子で初優勝を飾る。今年8月のスポーツクライミング世界選手権のリードで優勝、複合で3位となりパリ五輪出場が内定した。