なでしこJは優勝以外「意味がない」のか W杯の戦いを海外絶賛、結果論に偏る日本の風潮に警鐘
念願だけが突っ走ると「呪いの言葉」になる
しかしGK山下は、決定的なミドルシュートを奇跡的に指先でコースを変えて防ぎ、チームを救っている。終始、冷静なプレーも目立った。また、植木はPKを外したが、そもそも彼女自身が素晴らしい突破でPKを奪った点を称賛すべきだろう。無尽蔵のプレッシングでスウェーデンに息もつかせず、戦術的な反撃態勢も作っていた。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
「フィジカルが足りない」
そんな結果論にすべきではない戦いだった。ミスのディテールにフォーカスし、ストロングポイントを次に生かせばいいのだ。
事実、後半途中からのなでしこの猛攻は、観る者の心を動かした。アイデア豊かで、丁寧で、小気味良い。その技量は、スウェーデンの高さやパワーを凌駕していた。
女子サッカーは、その面白さをしっかり伝えられるようになって、受け止められるようになれば、十分に脚光を浴びる価値がある。少なくとも、そうやって欧米では女子サッカーが、かつてない盛り上がりを見せつつある。今回の女子W杯、ニュージーランドでも開催国でもない日本対スウェーデンというカードに4万3000人以上の観客が熱狂していた。
繰り返すが、勝ち負けに至るプロセスに重きを置けなかったら、その道は険しい。W杯や五輪の成績だけに囚われないアプローチで、彼女たちはもっと魅力的に映るはずだ。
「再び世界女王に!」
その念願だけが突っ走ると、希望はやがて呪いの言葉になる。
(小宮 良之 / Yoshiyuki Komiya)