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なでしこJは優勝以外「意味がない」のか W杯の戦いを海外絶賛、結果論に偏る日本の風潮に警鐘

念願だけが突っ走ると「呪いの言葉」になる

 しかしGK山下は、決定的なミドルシュートを奇跡的に指先でコースを変えて防ぎ、チームを救っている。終始、冷静なプレーも目立った。また、植木はPKを外したが、そもそも彼女自身が素晴らしい突破でPKを奪った点を称賛すべきだろう。無尽蔵のプレッシングでスウェーデンに息もつかせず、戦術的な反撃態勢も作っていた。

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「フィジカルが足りない」

 そんな結果論にすべきではない戦いだった。ミスのディテールにフォーカスし、ストロングポイントを次に生かせばいいのだ。

 事実、後半途中からのなでしこの猛攻は、観る者の心を動かした。アイデア豊かで、丁寧で、小気味良い。その技量は、スウェーデンの高さやパワーを凌駕していた。

 女子サッカーは、その面白さをしっかり伝えられるようになって、受け止められるようになれば、十分に脚光を浴びる価値がある。少なくとも、そうやって欧米では女子サッカーが、かつてない盛り上がりを見せつつある。今回の女子W杯、ニュージーランドでも開催国でもない日本対スウェーデンというカードに4万3000人以上の観客が熱狂していた。

 繰り返すが、勝ち負けに至るプロセスに重きを置けなかったら、その道は険しい。W杯や五輪の成績だけに囚われないアプローチで、彼女たちはもっと魅力的に映るはずだ。

「再び世界女王に!」

 その念願だけが突っ走ると、希望はやがて呪いの言葉になる。

(小宮 良之 / Yoshiyuki Komiya)

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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