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なでしこJは優勝以外「意味がない」のか W杯の戦いを海外絶賛、結果論に偏る日本の風潮に警鐘

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は7月から8月にかけて開催された、女子ワールドカップ(W杯)でなでしこジャパン(日本女子代表)が見せた戦いについて。ベスト8で敗れたものの、スペクタクルな内容だったと称える一方、「勝ち続けなければ意味がない」と選手に言わせてしまう風潮に警鐘を鳴らしている。

ベスト8で敗れたなでしこジャパンだったが、長谷川唯(左)や長野風花(右)らを中心とした連動性のあるサッカーで世界を魅了した【写真:Getty Images】
ベスト8で敗れたなでしこジャパンだったが、長谷川唯(左)や長野風花(右)らを中心とした連動性のあるサッカーで世界を魅了した【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:スペクタクルだったなでしこジャパンの戦い

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は7月から8月にかけて開催された、女子ワールドカップ(W杯)でなでしこジャパン(日本女子代表)が見せた戦いについて。ベスト8で敗れたものの、スペクタクルな内容だったと称える一方、「勝ち続けなければ意味がない」と選手に言わせてしまう風潮に警鐘を鳴らしている。

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 女子W杯、なでしこジャパンの戦いは称賛に値した。

 グループステージでは、ザンビア、コスタリカを蹴散らし、優勝候補の一角に名前が挙がっていたスペインも4-0と叩き潰し、3連勝の1位で勝ち上がった。ベスト8進出をかけたノルウェー戦では、3-1と見事な勝利。そして準々決勝の強豪スウェーデン戦では1-2と惜しくも敗れたものの、手に汗握る展開で試合を盛り上げた。

 確かに2011年以来の世界女王には及ばなかったが、彼女たちは“健闘虚しく”去ったのか。

 なでしこの戦いは、勝負を別にして「サッカーの楽しさ」を十分に伝えるものだった。自分たちがつなぐボールの道筋が見えるプレーで、それは決して簡単ではない。相応のボールスキルやビジョン、コンビネーションを練り上げてきたことが伝わってきた。相手の逆をとって、裏をかいて、ゴールに迫る。その様子は掛け値なしにスペクタクルだった。

「必死に戦う姿勢が清々しい」

 なでしこを評価する時、決まって使われる褒め言葉である。しかし、今回の彼女たちは、それだけに収まらない。サッカーの面白さを十分に表現していた。

 戦術的にも、よく準備されていた。スペイン戦では狙い通りのロジカルな守備とカウンターも成功。惜しくもベスト8で大会を去ることになったが、何ら恥じることはないだろう。

「優勝できなかったから、女子サッカーは盛り上がらない」

 そのような安易な風潮で締めくくることこそ、そろそろ日本国内で見直すべきだ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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