10代サッカー選手の欧州挑戦が増える背景 レアル中井卓大らが研鑽、日本にない“成長”の選択肢
スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回のテーマは、近年の日本サッカー界で増え続けている10代選手の海外進出についてだ。欧州各国リーグの有力クラブが持つセカンドチームをはじめとした下部組織が、若き才能の成長に与える影響力について考察した。
連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:U-20日本代表でも増えてきた海外組
スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回のテーマは、近年の日本サッカー界で増え続けている10代選手の海外進出についてだ。欧州各国リーグの有力クラブが持つセカンドチームをはじめとした下部組織が、若き才能の成長に与える影響力について考察した。
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今年5月、アルゼンチンで開催されたU-20ワールドカップ。U-20日本代表メンバーには、すでに欧州各国リーグで研鑽を積む選手が少なからずいた。チェイス・アンリ(シュツットガルト)、高橋仁胡(バルセロナ)、福井太智(バイエルン・ミュンヘン)、福田師王(ボルシアMG)はそれぞれ有力クラブのセカンドチーム、ユース在籍で、10代にして海の向こうへ戦いの場を求めている。
Jリーグでトップに上がり、プロ選手として成熟するのは1つの道だが、若手にとって未来への選択肢が増えたと言えるだろう。
欧州各国リーグには1つのメリットがある。
多くのクラブがセカンドチームを所有し、下部リーグを戦っている。ユース年代からいきなりトッププロの中に混ざるのはスピード、パワー、駆け引きなどで差がある。下部リーグながらも大人と対等にリーグ戦で相まみえることで、若手が戦いの場に慣れる仕組みがあるのだ。
日本人も、そこに参入した。
例えばU-20W杯メンバーからは落ちたMF中井卓大だが、スペインの強豪レアル・マドリードでユース年代を過ごし、セカンドチームであるカスティージャに昇格した。世界トップクラブでユース年代を駆け上がったこと自体、評価に値する。入るのも難関だが、生き残るのもふるいにかけられ、「カスティージャの選手の多くは1部レベルでプレーできる」と言われるほどのステータスだ。
カスティージャは現在3部リーグ(スペインでは20チームのリーグが2つで、合計40チーム)に在籍しているが、毎年のようにトップリーグへ人材を輩出している。昨シーズンは2部昇格プレーオフでバルサ・アトレティクも下し、決勝まで残った。最後の最後で昇格の道を閉ざされたが……。
ちなみに4部は18チームで5つのリーグに分かれる。多くの有力クラブのセカンドチームが3、4部に在籍。久保建英の所属するレアル・ソシエダのセカンドチームは3部、サードチームは4部に在籍している。