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東大入学より険しいプロサッカー選手の道 才能より大切な鍛錬と「自分の武器」を考え抜く力

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回はアンドレス・イニエスタを生んだ名門バルセロナや、今季レアル・ソシエダで輝いた久保建英らを例に、プロサッカー選手として成功する選手たちの共通点を探る。

プロ入り後もキック精度を磨き続けた横浜F・マリノスの水沼宏太(右)。数多くのストライカーとホットラインを築いた【写真:Getty Images】
プロ入り後もキック精度を磨き続けた横浜F・マリノスの水沼宏太(右)。数多くのストライカーとホットラインを築いた【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:サッカーの世界は練習の質量が道を切り拓く

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回はアンドレス・イニエスタを生んだ名門バルセロナや、今季レアル・ソシエダで輝いた久保建英らを例に、プロサッカー選手として成功する選手たちの共通点を探る。

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 どれだけ猛練習を重ねても、プロサッカー選手への道は“狭き門”である。プロの世界で活躍するのは、さらに難しい。東京大学に入学するよりも倍率は高く、聳え立つ難関に立ち向かうようなものだ。

 では、プロサッカー選手は突出した才能にもともと恵まれていたのか。

 面白いことに、必ずしもそうではない。飛び抜けた選手ではなかったにもかかわらず、いや、飛び抜けてはいなかったからこそ、地道に力を身につけ、プロになって活躍している例は少なくない。

「自分よりも才能のある選手はたくさんいた」

 プロで成功する選手の多くが、幼少期をこう振り返っている。サッカーの世界では、運動センスは一つの武器にはなるが、それは決定的ではない。もしそうだったら、ウサイン・ボルトがサッカー選手に転向し、セミプロでも通用しない道理はないだろう。運動能力の高さはプラスアルファに過ぎないのだ。

「ボールを止める、蹴る」

 サッカーは高いレベルになるほど、そこに尽きる。ポジションごとの比重は違うが、止められない、蹴れない選手はプロで通用しない。

「ボールに触っている時間」

 その質量が、道を切り拓く世界だ。

 先月、国立競技場でヴィッセル神戸がFCバルセロナと一戦を交えている。両クラブに所属したアンドレス・イニエスタの惜別ゲーム。スペイン王者に輝いたバルサは主力の多くが退団決定や怪我により不在で、1.5軍よりも2軍に近かったが、2-0で勝利を収めた。

 特記すべきは、日本で言えば高2のバルサのユース選手たちが、フィジカル的に優れた神戸のプロ選手を手玉に取っていた点である。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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