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「センスがない」と自覚、角田夏実が究めた異色の柔道 「分かっていても防げない」必殺技の原点

1年後の2024年パリ五輪へ向けて、6月29日に日本の注目競技の1つである柔道で4選手に史上最速の代表内定が出された。東京五輪の金メダリストである男子66キロ級の阿部一二三(パーク24)と女子52キロ級の阿部詩(パーク24)の兄妹、女子70キロ級の新添左季(自衛隊)、そして女子48キロ級の角田夏実(SBC湘南美容クリニック)だ。

5月にカタールで行われた世界選手権の決勝も巴投げで勝利。角田夏実はオール一本勝ちで3連覇を達成した【写真:Getty Images】
5月にカタールで行われた世界選手権の決勝も巴投げで勝利。角田夏実はオール一本勝ちで3連覇を達成した【写真:Getty Images】

角田夏実インタビュー中編、大学時代に異競技から学んだこと

 1年後の2024年パリ五輪へ向けて、6月29日に日本の注目競技の1つである柔道で4選手に史上最速の代表内定が出された。東京五輪の金メダリストである男子66キロ級の阿部一二三(パーク24)と女子52キロ級の阿部詩(パーク24)の兄妹、女子70キロ級の新添左季(自衛隊)、そして女子48キロ級の角田夏実(SBC湘南美容クリニック)だ。

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 角田は21年の世界選手権で初優勝を果たすと、今年5月のドーハ大会で3連覇を達成。圧倒的な強さが評価される形で、自身初の五輪内定となった。30歳にしてキャリア最高の状態にある柔道家は、これまでどんな道を歩んできたのか。インタビュー中編では、巴投げを最大の武器とする異色のスタイルが築かれた原点や、五輪に懸ける想いについて語った。(取材・文=松原 孝臣)

 ◇ ◇ ◇

 今年5月に行われた柔道の世界選手権で優勝し、大会3連覇。谷亮子、阿武教子に続く日本女子史上3人目の快記録を達成したのが48キロ級の角田夏実である。

 現在30歳。20代後半から進化を続ける点でも異彩を放つが、角田を特徴づけるのはその柔道スタイルにある。立ち技での一本を求めがちな日本柔道にあって、寝技や関節技を得意とする点だ。

 とりわけ、世界選手権決勝でも一本を獲った巴投げは、「分かっていても防ぎきれない」と言われることがあるほど大きな武器としている。巴投げで一本を獲る場面を見るのは拮抗した実力の持ち主同士ならそうそうないだけに、より印象的だ。

 独自のスタイルを培った原点は、東京学芸大学で過ごした日々にある。

「元々そんなにセンスがあるわけではないです」と自身を語る角田は、大学時代、自分の特色を否定しない指導者に出会えたことが大きかったという。そして大学で柔道の練習に加えて取り組んだのは、柔術やサンボだった。

「大学のOBの方でサンボや柔術をされている方がいて、そのOBの方が道場を部活で使っていない時間帯に一般の方たちと練習をしていました。その練習に柔道の強化になればと思い、参加させてもらいました。練習というより楽しくやっていた感じです」

 その中で関節技に磨きをかけ、寝技からの関節技は相手からすれば脅威となっていった。巴投げもまた、自身の柔道を貫いてきた延長上にある。

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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