大船渡の子供たちを指導した7年間 競泳・伊藤華英さんが築いた絆、これからも繋がる未来
伊藤さんからのメッセージ「主役はみんな、私はサポートするだけ」
場所を室内に移して行われたのは修了証授与式。子供たちは半年間で成長したこと、課題に感じたことなどの感想を一人一人発表していく。
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「苦手だった平泳ぎが少し克服できた。もっとタイムが縮められるようにフォームをもっと良くしたい」「半年間、華英さんに教えてもらったことがしっかりとできた。これからも教えてもらったことを思い出して、練習をしたい」「タイムが縮められてうれしかった。でも、クロールの呼吸で腕が下がる課題があるので、これからもっと頑張りたい」など堂々と発表を行い、伊藤さんも温かいまなざしで見守った。
そして、締めくくりに質問コーナーも実施。今回参加した小学6年生4人は全員、中学進学後も水泳を続けるという。中学生以降の大切なことについて問われた伊藤さんは「もう(水泳の継続を)決めていることは素晴らしい。でも、まずは楽しくやること。『やらなきゃいけない』と思うと楽しくない。好きなことを見つけに行く場所が学校だから。水泳に限らず、何が自分に合っているんだろうということを探してみてほしい」と親身になってアドバイスを送った。
伸び悩んだ時はどう対処するか、今年の世界水泳の注目ポイント、さらに見守っていた保護者からも「試合で失敗して、すぐまた次の週に試合がある。そういう時に親はどう声かけをすればいいな」という質問が飛び、伊藤さんはその一つ一つ誠実に答えていった。
およそ2時間半にわたったイベントもあっという間にクライマックス。最後に半年間を振り返り、伊藤さんは「みんな、とても一生懸命にやってくれました。(動画指導で)言った言葉を聞いて、次の月にその言葉通り泳いでくれて、フィードバックを生かしてくれていると感じていました。主役はみんな、私はサポートするだけ。一生懸命やらないと、ベストを尽くさないと成り立たない。そのなかですごく頑張ってくれました」と労った。
さらに、これからの人生に向けたエールも。「厳しいことも言ったかもしれないけど、みんながこれからどんな未来を歩んでいくかは自分自身で考えて、進んでいかないといけない。みんなが考えて出したそれぞれの答えが正解だから。水泳を通じて、そうしたことも学んでくれたらうれしいです」と伝えた。子供たちが伊藤さんの目をまっすぐに見つめ、一つ一つの言葉に聞き入っている表情が印象的だった。
2011年東日本大震災の復興・支援をきっかけに、東日本大震災復興支援財団が立ち上げた東北夢応援プログラム。今回参加した子供も大半は震災後に生まれた世代。街も着実に復興を遂げており、財団としてのイベントは今回で一区切りとなるが、伊藤さんによる大船渡の指導・支援は形を変え、今後も継続されていく。
伊藤さんが言った「主役はみんな、私はサポートするだけ」、深い絆で結ばれた関係はこれからも変わらない。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)