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日本でも当たり前だった子どもの遊び方 ピックアップ・ゲームの魅力を大人はどう支えるか

実際にゲームを観戦して感じたこと

 私は2月22日のゲームを観戦させてもらった。

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 ピックアップ・ゲームの要素は、ゲームそのものにも表れていた。前述したように子どもの年齢は8歳から14歳と幅が広い。年齢の幅が広いだけでなく、子どもの競技能力もさまざまだ。ボールを捉えてスイングできる子もいるが、バットでボールを捉えられない子どもや、まだ、バットをしっかりと振れない子どももいる。一般的にはレクリエーションの子どもの野球リーグでもU8、U10、U12などと分かれていることがほとんどだ。それでもゲームとして成立しているのは、大人が適度に介入しながら、ルールを柔軟に変えているからだろう。

 ここではコーチが投手役を務める「コーチピッチ式」を導入している。(コーチピッチは低学年のリーグではよく見られるものだ)。バットにボールがかすりもせずに空振り三振をしても「じゃあ、もう一球」といって、あと1スイングだけ挑戦の機会を設けている。また、相手チームのコーチからも「コーチの投げた今のボールはちょっと高かったらから、まだ2ストライクだと思う。あと一球」などとボール判定の声があがる。そして、対戦相手の子どもであっても、惜しみなくアドバイスの声かけをしている。便宜上4チームに分かれているだけで、どの子も自分がコーチをしている子どもという考えだからだろう。

 審判はいない。球審はボールを投げるコーチや、相手チームのコーチであり、塁審の役目はその場にいる大人のコーチと子どもの自己申告で成り立っている。(アメリカの子どものスポーツでは、審判には少額の謝礼が支払われることが多く、審判なしでゲームをするとお金の節約になるという面もある)

 子どもたちの野球の技術は洗練されているとはいえず、競技能力も高いとはいえない。しかし、何とかボールをバットで捉えて一塁へ駆け出していく子どもの表情には、うれしさがあふれていた。その喜びは、競技のレベルを問わないのだろう。その場に行けば、仲間がいて、野球ができるという気軽さと、プレーする楽しみを、活動目的を理解した大人と若いメジャーリーガーが支えているようだった。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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