渡辺一平は渡辺一平を超える 「東京五輪ぶっちぎり優勝」に宿る世界最速男の矜持
世界新記録から1年6か月「今、言えることなんですけど…」
俯瞰して水泳を見つめ直し、精神的に逞しさを増した21歳。その中で期待されるのは世界記録の更新だ。昨年1月に2分6秒67に世界記録を塗り替えてから1年6か月が経った。「今、言えることなんですけど……」と言って胸中を明かした。
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「去年は去年なりに練習していたつもりだけど、目標を見失っている感が物凄くあった。怪我をして気持ちを入れ直してからは僕なりに目標を持てている。去年の状況とは違った良い練習、内容のある練習ができているので、この練習を続けたい。パンパシは東京で行われる。小関さんも100メートルで何回も良いタイムで泳いでいたけど、僕は200メートルの世界記録を持っているので負けないように頑張りたい」
特に200メートルは世界のライバルもタイムを縮めている。「どんどんレベルも上がってきているので自己ベスト更新、過去の自分を超えたいと思いながら練習している」と言う。では、“過去の自分超え”に必要なものは何なのか。
「練習中、過去と同じような練習をすることがある。例えば、200メートル4本という練習があったら、過去のタイムを持ち出して、この時はどういう泳ぎをしていたか、どういうタイムで泳いでいたかをイメージしながら『このタイムより絶対速く泳ぐ』と思いながら練習しているので、まず練習中は過去の自分というか練習でも過去に負けないことを第一に考えて練習はやっている。
あと、世界新記録を出すまでの自分と今の違いと言ったら、出す前はオリンピック6位で悔しい思いをしてチャレンジャーとして練習やレースを頑張っていたけど、今、追われる立場となり、自分の居場所、立場が変わったという感じがある。でも、そんなことも言っていられないし、小関さんにも全然勝てていない。練習中やレース中はチャレンジャーと思いながら頑張っています」
何度も口を突いた小関の名前。それは、渡辺を刺激する“最も近いライバル”ともいうべき存在となっている。
「今までは小関さんにずっと勝ちたいと思っていた。去年の日本選手権で負けて世界水泳で勝つぞと思いながら練習していたけど、結果的にラスト50メートルで交わされているので、今こういう国内大会でも世界レベルのレースができるというのも凄くうれしい。でも負けたくないという気持ちは去年とはまた違って、今は『自分が一番強い』と証明したい」
果たして、良きライバルの存在を力に変えながら、主戦場とする200メートルをメインターゲットにする。