[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

W杯でGKの活躍が目立った要因は? アーセナル元コーチが感じた技術と分析の進化

2021年から兵庫県の相生学院高校サッカー部を指導したジェリー・ペイトン氏(右端)【写真:相生学院】
2021年から兵庫県の相生学院高校サッカー部を指導したジェリー・ペイトン氏(右端)【写真:相生学院】

無名な選手を集めた高校サッカー部からプロが誕生

 無名な選手ばかりを集めた相生学院は、1期生たちが最上級生になったプロジェクトの3年目で、全国高校サッカー選手権兵庫県予選の決勝まで勝ち進んだ。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

「我々にはスカウティングネットワークもないので、ほとんどの試合では開始5~10分で相手の出方を見て効果的な対処方法を探ってきた。選手たちが実践してきたのはアーセナルでも行われてきたトレーニングで、彼らは目の前の試合に集中し続けて、最後は優勝できると信じられるようになった。結局、終盤のPK判定で敗れたわけだが、それは彼らがすべて自分たちができることを出し切った結果で、まったく悲観する必要はない。その中から日高光揮がヴィッセル神戸、福井悠人がカマタマーレ讃岐と、山崎遥稀はドイツのアレマニア・アーヘンのU-19と契約した。これは物凄く大きな成功だった」

 ペイトンは相生学院を指揮してきた間は、連日ピッチの内外を問わず30歳の若い上船総監督とディスカッションを続けた。

「今ではトシ(上船)と私の考えは同じだ。彼には私のすべての知識、哲学を与えてきた。もう彼は、プロのどのレベルで指導をしてもまったく問題ないレベルにある。その気になればGKへのハイレベルな指導も可能だ。トシはサッカーを愛し、深く理解し、洗練されたスタイルで多くの選手たちを成長させてきた。選手たちを、いつリラックスさせて、いつ強度を高めていくかなども十分に把握している」

 2022年末、ペイトンはJ1復帰を果たしたばかりの横浜FCからオファーを受けた。

「しかし私は全く心配をしていない。私がいなくなっても、トシなら十分に選手たちを成長させていける」

 クリスマスに上船にアーセナルのネクタイを手渡すと、ペイトンは淡路島を去って行った。(文中敬称略)

■ジェリー・ペイトン(Gerry Peyton)

 1956年5月20日生まれ、元アイルランド代表GK。現役時代はフラム、ボーンマスなどイングランドのクラブを渡り歩き通算600試合以上に出場。アイルランド代表として88年のEUROと90年W杯のメンバーに名を連ねた。引退後は指導者の道へ進み、94年からはジュビロ磐田で、95年からはヴィッセル神戸でGKコーチを務める。2003年からは名将アーセン・ベンゲルの下、アーセナルで15年を過ごし数々の世界的なGKを育てた。18年からは清水エスパルスでコーチを、21年からは兵庫県の相生学院高校サッカー部監督などを歴任。23年シーズンはJ1横浜FCのセットプレーコーチ兼アナリストに就任した。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

1 2 3

加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集