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「カタールW杯を見た世代」が築く未来 “死の組”突破が日本サッカーに残した財産とは

メッシの存在自体が多くのアルゼンチン人に感動を与えた

 そして決勝のフランス戦では、個人が激しく戦って局面を制すことが戦術になっていた。前半で2-0とリードし、後半にさすがに動きが鈍って2-2に追いつかれ、延長では1点ずつ奪い合った。そしてPK戦は気合で勝ち切った。

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 現地のアルゼンチン人が熱狂したのは当然だろう。テレビモニターを通し、多くのアルゼンチン人も感動を覚えた。彼らはアルゼンチン人であることを誇りに思ったはずだ。

 何より、子供たちは単純に選手たちに憧れた。「水色と白色のユニフォームを身に纏って、ワールドカップのピッチに立ちたい」。そう夢見る少年少女をどれだけ生み出したか。そのパワーはとてつもなく大きい。

 世界王者になったアルゼンチン代表は、これ以上ない「育成のスイッチ」を入れたことになる。

 数年後、カタールW杯を戦ったアルゼンチン代表選手に憧れて、プロサッカー選手になった子供たちが代表に入ってくるだろう。それはほとんど決まった未来である。今大会4得点したフリアン・アルバレスは、子供の頃からメッシに憧れてプロサッカー選手になったが、15歳の時に一緒に撮った写真を今も大事にしているという。世界最高の舞台で躍動した存在は、強烈な引力だ。

「結果の先にあるものは、誰もあなたから奪うことはできません。あなたはアルゼンチン人、1人ひとりに感動を与えたのです」

 アルゼンチン人の女性リポーターが、決勝前にメッシとのインタビューで伝えた言葉は世界中に流布されている。

「あなたのシャツを着ていない子供がいるでしょうか。公式のものでなく、偽造品かもしれないし、想像して作ったシャツかもしれません。でも、あなたはみんなの人生を幸せに明るくしました。それはW杯優勝よりも偉大で、誰にも奪えません。あなたが多くの人を幸せにした瞬間に、心から感謝しています。W杯優勝よりも大切なものとして」

 これはアルゼンチン人の総意に近いだろう。メッシが残したインパクトは歴史的だ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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