希代の名ドリブラーから驚異の長寿選手に… カズが描いた“生き残る術”
衰えを食い止める努力と経験の生かし方
「キレは今でも失くさないように努力していますよ。でもどうしても瞬発力は年齢とともに落ちて来る。ただし一気に100からゼロに落ちるわけじゃないから、いかに90、さらに80で食い止めるかに努力しているわけです」
カズは続けた。
「キレで勝負するのは、今でも変わらないと思うんですよ。でもやっぱりそれだけではダメ。今まで培ってきた経験を活かす。じゃあ、経験てなんだと言えば、相手の嫌がることを考えながらやるということですかね」
ちょうど高速シザースを武器に、10代のクリスティアーノ・ロナウドが頭角を現して来た頃だった。
「フェイントをひとつとっても速ければいいというものではない。速いとマークする相手が混乱することはあるけれど、逆に速過ぎて反応しないこともある。1度スローダウンしてから速く、あるいはその逆もある。若い時は100%自分のペースでやっていた。でも結局ディフェンダーが一番嫌なのは、見透かされ、仕掛けられることですからね」
この頃「スタンレー・マシューズを目指せ」というコラムを書いた記憶がある。初代バロンドール(欧州最優秀選手)の受賞者で、50歳までプロとして現役でプレーをした伝説の人。まさかこのハードワークが当たり前の時代に、本当にカズがマシューズを超えてしまうとは思わなかった。
【了】
加部究●文 text by Kiwamu Kabe