なぜ、元オリンピック選手が大船渡で水泳を教えるのか 1年間の“夢レッスン”とは
梅雨の合間に蒼天が覗いた24日。南三陸の海にほど近い、岩手・大船渡の小さなプールに元オリンピック選手が現れた。伊藤華英さん。08年北京、12年ロンドンと五輪に2度出場した日本競泳界のトップスイマーだ。プールサイドに立つと、目の前には小学2年生から中学2年生まで、緊張の面持ちをした10人の子供たちがいた。
北京、ロンドン五輪代表の伊藤華英さんが「東北『夢』応援プログラム」に登場
梅雨の合間に蒼天が覗いた24日。南三陸の海にほど近い、岩手・大船渡の小さなプールに元オリンピック選手が現れた。伊藤華英さん。08年北京、12年ロンドンと五輪に2度出場した日本競泳界のトップスイマーだ。プールサイドに立つと、目の前には小学2年生から中学2年生まで、緊張の面持ちをした10人の子供たちがいた。
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「伊藤華英と言います。華英さんか、華英先生と呼んでください。わからないことは気軽になんでも聞いてください」。こう語りかけると、子供たちの表情も少し、ほころんだ。元オリンピック選手が大船渡で子供たちに水泳を教える――。なんとも夢のような時間は「東北『夢』応援プログラム」によって生まれた。
公益財団法人「東日本大震災復興支援財団」が行っている企画は、被災地の子供たちに対し、毎日、直に接することができなくても、動画やテキストメッセージを使いながら、オンライン上で1対1の遠隔指導を続け、子供たちが設定した目標に少しでも近づける――。そんな画期的なコンセプトの取り組みだった。
伊藤さんは水泳編で「夢応援マイスター」という先生役を務め、大船渡の子供たちに指導を行う。今年で3年目となり、この日は1年間のスタートとなる夢宣言イベント。まずは対面形式のクリニックで泳ぎのイロハを手ほどきしながら、子供たちの能力を把握する。「楽しくやりましょう」という伊藤さんの掛け声で始まった。
「大事なのはけのび。しっかりと耳の後ろに当てて伸ばすこと。いい姿勢さえ取れれば、楽に、速く泳げるようになります」。一番に説いたのは、どんな泳法でも基本となる姿勢。実際に子供たちにけのびをやってもらいながら、伊藤さん自身もお手本を披露。けのびだけで15メートル進む様子には子供たちも目を丸くした。
こうして一つ一つポイントを押さえながら1時間の熱血指導。すると、たどたどしい泳ぎだった子供にも成長の跡が伺えた。そして、実際にこれから習いたい泳法で25~50メートルでタイム測定。この数字を基準にこれから指導していくことになる。それぞれが懸命に全力を出し切る様子を伊藤さんは温かい目で見守っていた。