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部活の地域移行で考える課題 不適切指導したらコーチ職はクビ、教員職としてはOKか

教育委員会が教員に処分を課してきた日本、地域移行が進んでどうする?

 このケースに限らず、運動部のコーチ職をクビになっても、学区の教員や職員としては解雇されず、仕事を続けているケースが多いといわれている。

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 サンディエゴの高校では部員の人種差別行為が発端であったが、ミシガン州の高校アメフト部ではこんなことがあった。ヘッドコーチが選手の襟首をつかみながら詰め寄ったことが不適切指導に相当するとみなされてコーチ職を解かれた。このコーチは、同じ高校の体育教員でもあり、体育科の指導は継続している。教育者としての資質を問う声もあるし、不適切指導を受けたアメフト部の生徒は安心して学校に通えないという意見も出ている。

 運動部のコーチはクビになっても、なぜ、教員として働き続けるのか。学区教育委員会との本契約の内容が教員を解雇しにくいものになっているというのが理由のひとつだ。教員側が労使交渉において、できるだけ仕事を失わないような条件を勝ち取ってきたからだともいえる。一方の課外活動指導の補助的契約は、通常は1年単位としていることもあって、学区教育委員会や学校は運動部コーチをクビにしやすい。逆に、教員として不適切な指導をして懲戒免職されたときには、その学校の運動部のコーチ職だけを維持することはほぼ不可能だろう。

 これまで、日本の部活動の指導は学校教育の一部として教員が指導を担ってきており、部活動で体罰などの不適切な指導が起こったときには、教育委員会が教員に懲戒処分を科してきた。これから、教員の仕事と部活動を切り離し、教員が地域の大人のひとりとして活動指導している中で、不適切な行為があったときに、教育委員会はどうするのか。これまでと同様に教員に対して懲戒処分を科すことになるのだろうか。また、民間企業勤務で地域の指導を引き受ける大人が不適切な指導をし、コーチ職を解かれた場合、この人を雇用する企業は就業規則に照らし合わせて何らかの処分を科すのかどうか。

 アメリカの運動部でも、コーチとして問題があったが教員としては問題行動のない場合、二つの仕事を分けて考えるのか、どちらの指導の資格もないとするのかは、雇用契約も絡んで難しい問題のようである。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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