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「折れ剣」再生で切り拓く未来 フェンシング見延和靖が『チアスタ!』に込めた願い

2021年に開催された東京五輪において、日本初の団体エペで金メダルを獲得したフェンシング。競技人口最多のエペで、大柄な他国の選手たちを相手にポイントを重ねていく様を、テレビの前で固唾を飲んで見守った人も多いだろう。そんな金メダリスト・四銃士の中に、試合後、雄叫びを上げ、日の丸を掲げた選手がいる。それが、日本のフェンシング界を牽引する見延和靖だ。

フェンシング界を牽引する見延和靖、無観客の東京五輪で感じた応援の力

 2021年に開催された東京五輪において、日本初の団体エペで金メダルを獲得したフェンシング。競技人口最多のエペで、大柄な他国の選手たちを相手にポイントを重ねていく様を、テレビの前で固唾を飲んで見守った人も多いだろう。そんな金メダリスト・四銃士の中に、試合後、雄叫びを上げ、日の丸を掲げた選手がいる。それが、日本のフェンシング界を牽引する見延和靖だ。

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 35歳になった今も、より“進化”するために己と戦い続けている見延は、再来年のパリ五輪を見据えながら、フェンシングの普及やスポーツSDGsに取り組んでいる。そんな彼が今年6月、自身のインスタグラムに1件の投稿を行った。それは、「『チアスタ!』にアスリート登録をした」という内容。自身のフェンシングを極めようとトップレベルで戦い続ける不屈の“剣士”は、なぜアスリートとサポーターをつなぐプラットフォームの活用を始めたのか。そこには愛する競技の継続的な発展と、新たな道を切り拓くことへの熱い想いがあった。

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 今年7月にエジプトで行われた世界選手権で、見延は個人で銀メダル、団体で銅メダルを獲得し、今シーズン最後の国際大会で有終の美を飾った。そして来年からは、いよいよ2024年パリ五輪の出場権を懸けた選考レースがスタートする。

「僕自身、東京五輪以降、年齢的にもベテランと言われる域に入ってきていると思います。ただ、僕の目標は東京でもパリでもありません。自分自身のフェンシングをどこまで極めることができるか、です。そう考えると、まだまだ自分の限界は先にあると思っています。そこを見据えた上で、自分のスタイルをもう一度、構築する必要があると思っていて、新しいスタイルや戦術に取り組んでいる最中です。今シーズン、いい手応えはずっと感じていましたが、なかなか結果に結びついていなかった中で、シーズンを締めくくる最後の大会で大きい結果を出せて、目指すべき方向は間違っていなかったと感じています。少しずつ結果に表れてきていますし、来シーズンのスタートまでにはまだ十分に時間があるので、さらにコンディションを整えて感覚を研ぎ澄ましたまま、来年から始まる選考レースに向けて、良い成績を狙っていければと思っています」

 目標はあくまでも、自身のフェンシングを極めること。世界選手権での個人銀メダルは日本人初の快挙となったが、これも見延にとっては一つの通過点に過ぎない。「維持することよりも、少しでも変化を加えていきたい。それが結果や進化に繋がっていく」との言葉通り、変化を恐れずにチャレンジし続けることによって、フェンシング界で新たな道を切り拓いていきたいとの強い想いがある。

 フェンシングはスポーツの中で、比較的長く競技を続けられる特性があり、見延も「フェンシング=生涯スポーツ」と表現する。年齢を重ねても世界のトップで戦い続けることが自身にとってのこれからの挑戦であり、同時に競技人生が長いからこそ、多くのファンにフェンシングの魅力を伝えていく使命も感じている。

 昨夏の東京五輪では、団体エペで日本初の金メダルという快挙を達成した。本来ならば会場は多くのファンで埋め尽くされ、歓声に包まれているはずだったが、時はコロナ禍。無観客という通常とは異なる環境での試合となりながらも、「(2016年)リオ五輪の時よりは、たくさんの応援が会場に届いているという感じはあった」と振り返る。試合会場に観客の姿がなく、声援を直接受けなくても、その存在が「すごく力になった」という。

世の中や社会に恩返し、スポーツSDGsの一環として取り組んでいること

 たとえ物理的な距離は遠くても、ファンの想いは選手に届き、背中を押してくれる――。見延自身が東京五輪で実感したような“応援”をデジタルで可視化したのが、『CHEER-FULL STADIUM チアスタ!』だ。東京五輪のオフィシャルパートナーを務めた大日本印刷株式会社が設立・運営しているアスリート支援プラットフォームで、サポーターがお気に入りのアスリートやチームに対し、自分だけのデジタル応援幕を作成して贈ると、応援幕の購入金額の一部がアスリートの活動資金として還元される仕組みになっている。贈った応援幕に対してアスリートからメッセージが届く機能もついており、日々のタイムライン投稿と合わせてサポーターがアスリートをより身近に感じて、さらに応援したくなるというわけだ。

 五輪や世界選手権などの大きな大会は、その注目度の高さから選手も自然とファンの応援を目にする機会が増える。しかし、それ以外の何気ない日常でも、見延は「目に見える形で応援していただけるのは自分にとってもすごく力になるし、それによって競技に集中する時間をうまく作ることができる」と“応援”の影響力を感じているという。そこでもっと多くのいろいろな人にフェンシングを知ってもらいたい、新たに取り組んでいるスポーツSDGsについても知ってもらいたいとの願いを、『チアスタ!』に込めている。

 だからこそ『チアスタ!』では、「スポーツに寄り添った」活動報告がメインで投稿されており、その中に『折れ剣プロジェクト』という言葉がある。昨年6月に設立されたスポーツSDGs協会の中で、見延が取り組んでいるのが『折れ剣再生プロジェクト』だ。SDGsの観点から、折れたフェンシングの剣の再生に取り組む活動だが、今回、厚さ1ミリのメダルに再生することに成功し、地元・福井県越前市で行われた大会で選手に授与したという。

「もともとたくさんの方に支えられて競技に集中することができているというのを強く感じていました。だから、世の中や社会に対して、何か還元というか、恩返しをしたいと思っていたんです。僕は高校からフェンシングを始めたのですが、その頃から折れた剣は破棄するしかなくて、とても高価なものなので、すごくもったいないと感じていました。職人さんの手作りなので、日本では折れた剣の再生は非常に難しい。ゆくゆくは剣の再生を目指したいと考えていますが、今回はメダルに形を変えて子どもたちにプレゼントすることができました」

 プロジェクトに活用される剣はすべて、勝利を目指してトレーニングで使われてきたものや、実際に世界選手権で使われたものが使用されているという。トップアスリートたちが日々たゆまぬ努力を積んできた、その証が刻まれている剣だ。彼らが切り拓いた道を、次の世代につなげたい。そんな想いをこのプロジェクトからは感じずにはいられない。現在は、刃物の街として知られる越前市の職人さんの力を借りて、折れた剣を包丁に再生するプロジェクトも進行しているという。

 実は『チアスタ!』には、『未来を創ろう アスリートとともに #チアスタ!だからできること』というチアスタ!×SDGsの特設ページがある。ここでも『折れ剣再生プロジェクト』の詳細を見ることができ、誰でもプロジェクトを支援することが可能だ。

チアスタ!×SDGs特設ページの『折れ剣再生プロジェクト』詳細はこちら

「誰もやっていないこと、誰も到達しなかったところに、道を切り拓いていくところに価値を見出していて、それが自分にしかできない価値の作り方だと思っています。自分の限界はまだまだ先。だから思いつくことにはチャレンジしていきたい」

 フェンシングを愛する想いと、自分のフェンシングを追求し続ける飽くなき探求心が、パリへと続く道を切り拓く。そしてその先に続く、終わりなき旅路へと誘い続けるに違いない。

▼チアスタ!では「見延和靖」選手へデジタル応援幕を贈ることで支援ができます
チアスタ!「見延和靖」のアスリートページはこちら



(THE ANSWER編集部)