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真のエースになった張本智和 水谷隼から新時代へ転換、始まりは4年前の「眠れぬ夜」

「水谷さんはエースの自覚があったと思う。それを自分に託してくれた」

 6大会連続メダルを逃した日。「眠れない夜だった。悔しさはずっとあった」。世界で勝つ難しさ、日の丸の重みを思い知った。

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 世界卓球以来の団体戦となった昨年東京五輪の前。水谷と話し込み、経験談を聞いた。「4年に一度の舞台。本当に緊張するから」。どんなに経験を積んでも、プレッシャーのかかる世界大会。心の準備の仕方を教わった。

 水谷、丹羽孝希と出場した東京五輪男子団体は銅メダル。大会を終えた後の会見、水谷は「張本のプレーを見て、頼れる後輩がいることは凄く嬉しいですし、卓球界の男子はこの先も明るいんじゃないかなと思っています」と期待していた。同席した張本は背筋を伸ばした。

「水谷さんも自分自身がエースだという自覚があったと思う。それを次は自分に託してくれた」

 2020年の世界卓球団体戦はコロナ禍で中止に。リベンジを狙う今回は、4年ぶりの開催となった。水谷が引退し、丹羽がインフルエンザで大会直前に出場辞退。否が応でも、期待は19歳の背中にのしかかった。

 ここで教わった心の整え方が生きた。

「日本の皆さんからの期待も大舞台の方が大きい。そういう時ほどプレッシャーを感じてしまう。五輪は大舞台だと意識しすぎた。けど、実際はいつもと変わらない相手。今回はあまり世界卓球だと意識せず、TリーグやWTTツアーと同じ気持ちでプレーした。中学生の時は全くプレッシャーを感じていない中でいいプレーができた。そういうメンタルに近づけるためにも、いつも通りやる意識を持つという工夫が必要だった」

 いまだチーム最年少の19歳ながら、誰よりも経験で上回る。年上選手にも遠慮なくアドバイス。背中でも、言葉でも日本を引っ張った。「水谷さんがいた頃みたいに『エースの2点+1点』ではない。どこでも点を取る可能性があるチーム。4年前より強いと言い切れる」。グループリーグのルーマニア戦、自身は1勝1敗。仲間が取り返してくれたから勝てた。

 ベンチからも送り続けた声援。いつの間にか声は割れていた。

 この日の試合前、田勢監督の前で「やばい、緊張してきた」とポツリ。これも敢えて弱音を漏らすメンタルコントロールだった。「自分で抱え込むよりも、共有した方がいい。監督はきっと理解してくれるので」。真のエースへと成長を遂げ、丹羽にメダルを持ち帰る約束も達成。8日の準決勝は、10連覇を狙う最強中国が相手だ。

「丹羽さんと一緒にメダルを取れたと思っている。このチームにできないことはない。明日、どこが来ても目標は世界チャンピオン。みんなで一致団結して明日も勝ちたい。自分たちが歴史を変えられるメンバーだと思う」

 4年間で頼もしく成長した。数々の最年少記録を塗り替えてきた日本の至宝。卓球ニッポン新時代を背負う張本の栄光は、これからだ。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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