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日本は「お茶当番」米国は「ごはん当番」 子どものスポーツが保護者に求める献身の背景

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「ユーススポーツのおやつ当番・ごはん当番」について。

今回のテーマは「ユーススポーツのおやつ当番・ごはん当番」について(画像はイメージです)【写真:Getty Images】
今回のテーマは「ユーススポーツのおやつ当番・ごはん当番」について(画像はイメージです)【写真:Getty Images】

連載「Sports From USA」―今回は「ユーススポーツのおやつ当番・ごはん当番」

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「ユーススポーツのおやつ当番・ごはん当番」について。

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 日本の子どものスポーツ、特に野球などは「お茶当番」と呼ばれる慣習がある。保護者が当番でチームの監督や子どもたちにお茶などを用意し、水分補給を助けている。このような当番の負担があるがゆえに子どもをスポーツチームに入れたくないと考える親が少なくないことや、チーム内部でも負担を巡ってもめ事が発生するなどの問題があるという。

 この連載でもお伝えしたように、アメリカの子どものスポーツでもお茶当番に似た保護者の負担はある。チームの練習や試合に、全員分のおやつ(スナックやペットボトル入りスポーツ飲料など)を持ってくるように求められることが多い。たいていは、メールや情報共有アプリなどで、どのようなおやつや飲料を持ってきてほしいかという一覧がまわり、持っていける、また、持っていきたいおやつや飲料の横に親が自分の名前を入れていく。ほぼ当番制といえるが、持っていくものや、どの試合に持っていくかなどは、自分で選べるようになっていることが多い。だから、決められた日に決められたものを用意しなければいけない当番よりは気軽であると私はかつてレポートした。

 ところが、このおやつのレポートをした後、私は「ごはん当番」ともいえるものを経験した。次男の高校アイスホッケー部は、保護者がチーム全員とコーチ陣の夕食を提供するという慣習があった。私の息子のチームでは、ホーム開催の公式戦前日の練習終了後の夕食を用意するというもので、場所はそれぞれの個人宅である。用意する食事は食べ盛りの少年約20人プラス、コーチ数名分。ただし、ここでも厳密にいうと「当番」ではない。できる人が、できる日に引き受けるという方式だ。ホーム開催の公式戦の試合数を数えると、何人かの保護者は引き受けなくてもよいが、ほとんどの人が1回引き受けると、まんべんなく負担できるという感じだった。

 用意する食事の内容にも無頓着ではいられない。シーズン前のコーチと保護者ミーティングでは、運営方針やチームの規則について確認する。このミーティングのなかで、オフアイスのトレーニングを担当するコーチから栄養補給についても説明があり、これにそった食材を使った夕食を提供することになっていた。アメリカではパーティー、特に子どもの誕生日会などではピザが出ることが多く、大量のピザに飲み物、おかしを用意して済ませることが珍しくない。しかし、試合前日のチームの食事は、大量のピザと清涼飲料水というわけにはいかない。そうはいっても、手間のかかるものは大変で、パスタ系やチキンを使った料理に野菜サラダを用意することが多いようだ。息子の話によると、ケータリングサービスを使っているお家が多いとのことだった。それを聞いて、私も行きつけで、事情を理解してくれる、長男の子ども時代のチームメートの保護者が経営しているリーズナブルな値段のレストランにお願いした。

 こういったものは「チーム・ディナー」や「チーム・ミール」と呼ばれていて、それぞれの運動部によって形式が異なる。次男は高校サッカー部にも所属していたが、このサッカー部では「ごはん当番」はなく、シーズン中に1度だけチームメートの家でごはんを食べさせてもらう機会があっただけだ。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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