宮里藍が「天狗になりそう」だった18年前 引き戻したのは父の怒り「忘れられません」
ジュニア女子ゴルファーを対象にした第3回宮里藍インビテーショナルSupported by SUNTORYは25日、叶結衣(沖学園中3年)の優勝で幕を閉じた。大会側から招待された中学1年から高校2年までの33人が出場。大会中、宮里は保護者への「レッスン会」も実施した。「スコアと人の価値は一致しない」。自身の経験も踏まえ、親と選手のあるべき関係性を説いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)
第3回宮里藍インビテーショナルSupported by SUNTORY
ジュニア女子ゴルファーを対象にした第3回宮里藍インビテーショナルSupported by SUNTORYは25日、叶結衣(沖学園中3年)の優勝で幕を閉じた。大会側から招待された中学1年から高校2年までの33人が出場。大会中、宮里は保護者への「レッスン会」も実施した。「スコアと人の価値は一致しない」。自身の経験も踏まえ、親と選手のあるべき関係性を説いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)
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大会第2日。宮里は、選手たちのラウンド中に保護者に向けた「レッスン会」を行った。現役時代、宮里がメンタル面で師事したピア・ニールソン氏、リン・マリオット氏が提唱した思考「ビジョン54」に基づいた「アスリート ペアレンツ向け講習会」だった。
37歳で1児の母親でもある宮里は、「恐縮です」と言いつつ、人生の先輩たちへ恩師2人と自身の考えを伝えた。
「大事なことは、ゴルフを通じて人としての自信をつけることですが、結果が悪くても人間の価値は変わりません。私はアメリカに行って、2年目に飛距離を伸ばそうとして、スイングを大幅に改造しました。その結果、自分のリズムを忘れてドライバーイップスになりました。とても苦しかったのですが、(コーチである)父親は一緒に悩みながら、毎日電話をしてきて、『失敗してもいい』『辛かったら辞めてもいい』と言ってくれたので、とても救われました」
結果が出ないことを責めず、もがいている子供に寄り添う言葉だった。一方で、宮里は父親・優さんに激怒されたエピソードも明かした。
「プロ2年目(2004年)のサントリーレディスで優勝した後、日が暮れるまで200人ぐらいにサインをして、夜11時頃に沖縄の空港に着きました。そして、荷物をピックアップする時にたくさんの人に無許可で写真を撮られ、ある人からは握手を求められました。私は『こんな時間にまだ』という感じで、無愛想な顔をしていたのですが、家に向かう車の中で、父にしこたま怒られました。『お前はゴルフができるから自分が偉いと思っている。そんな態度なら、ゴルフを辞めてしまえ』と。その時、私はすごく反抗しましたが、今になって『ごもっとも』と思います。人間性の部分で怒られたことは、忘れられません」
筆者は新聞記者時代、宮里を高2から取材し、サントリーレディス優勝の瞬間も現場にいた。優さんとしても、「最高の日」のはずだが、「ゴルファーの前に人格者であれ」の信念を曲げなかった。
あれから18年の時が経ち、宮里が優さんと同じ考えで言葉を紡いでいた。
「選手が何を考えてプレーしたかを決めつけて、指摘することはあり得ません。スコアがいい時も悪い時も、『今日の良かったところはどこ?』『改善できるところは?』『それは、どうすれば実現できる?』などと、質のいい質問をして、話し合ってください」
ジュニアゴルファーの中には、ラウンドの結果が悪いと親に怒られることから、萎縮し、スコアをごまかす選手もいるという。子供がそうならないために、親が何をすべきかを伝えているようにも感じた。そして、宮里は「15~18歳は急成長する時期。想像以上のことをしてしまう瞬間がある」とし、ここでも「自尊心=スコアではありません」と明言。「子供がしていることであり、親の自分がやったかのように話さないでください」とも伝えた。
大会を終え、あらためて宮里に18歳の終わりに経験した那覇空港での出来事を聞くと、「確実に天狗になりそうな時期でした。それを引き戻してくれたことは、ありがたかったです」と、父親への思いを明かした。ジュニアを経て、プロで成功している選手と親の関係もさまざま。だが、多くの人から愛される宮里については、「この親にして、この子あり」をあらためて感じさせられた。
(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)