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「恨みを残さない」サッカーの不文律 一触即発→“談笑”、スペインで見た驚きの光景

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は試合や練習中に、相手チーム選手や仲間同士で時折起こるいざこざについて。サッカーには闘争心が不可欠であると同時に、そうした怒りのパワーをピッチ外へと引きずらない重要性を説いている。

サッカーの試合で選手同士のいざこざはつきものだが、ピッチ外に引きずらないことが暗黙の掟となっている【写真:Getty Images】
サッカーの試合で選手同士のいざこざはつきものだが、ピッチ外に引きずらないことが暗黙の掟となっている【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:Jリーグで起きた2つのいざこざと暗黙の掟

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は試合や練習中に、相手チーム選手や仲間同士で時折起こるいざこざについて。サッカーには闘争心が不可欠であると同時に、そうした怒りのパワーをピッチ外へと引きずらない重要性を説いている。

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 ◇ ◇ ◇

 Jリーグのピッチで起こったいざこざは、しばしばプレー内容以上に話題を集める。

 2月、開幕戦のガンバ大阪対鹿島アントラーズの試合で、敵味方の交錯が物議を醸した。ボールをキープしたG大阪FWパトリックに対し、鹿島のFW鈴木優磨がタックル。両者はもつれ合い、鈴木が足をつかみ、パトリックが腕で振り払おうとした。実際のところ、パトリックの腕は当たっていないようにも映ったが……。結局、鈴木はお咎めなしで、パトリックはレッドカードを受けた。

 判定を巡っては、外野のほうが騒いだ。

「なぜパトリックだけが裁かれる!?」

 その不当さによって、今度は鈴木がバッシングを浴びる形になった。

 5月、セレッソ大阪とG大阪による“大阪ダービー”では、G大阪の選手同士が派手な口論に及んでいる。

 終盤、リードされた展開で、DF昌子源が左サイドのスローインで早く試合を再開しようとしたが、前線の動きに不満があったのか、大声で叱責するような口調と身振り手振りをすると、激高したFWレアンドロ・ペレイラが駆け寄り、お互いつかみ合いになりかけた。味方が仲裁に入って大ごとにはならなかったが……。

 このシーンはメディアで大きく取り上げられ、「仲間割れ」と揶揄するように報じられた。SNSでは格好のネタになっている。「味方同士の喧嘩」というのは、たとえサッカーを知らなくても、一般化して語れるのだろう。道徳的に言って、人前で声を荒げて言い合う姿は模範的ではない。それに対し、人は何か意見をぶつけたくなる。

「争う姿を子供には見せたくない」

 そんな意見もある。

 サッカーの育成の観点から、どう向き合うべきか。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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