進化できないと思ったら「僕が引退する時」 Jリーガー宇賀神友弥がラン検定挑戦の理由
「ラン検定」の公式ページには、「“ラン検定”とはラン(走り)についてさまざまな角度から学ぶことであり、ランの理解が深まれば、目的に応じた適切なトレーニングを行うことが可能となり、パフォーマンスアップやケガ予防に役立つ」と記載されている。元陸上のトップアスリートが立ち上げたこのラン検定で1級を取得したJリーガーがいる。彼はなぜ、サッカー選手でありながら、走りを学んでいるのか。その理由を探った。(取材・文=藤井 雅彦)
現役Jリーガーでありながらラン検定1級を取得した理由
「ラン検定」の公式ページには、「“ラン検定”とはラン(走り)についてさまざまな角度から学ぶことであり、ランの理解が深まれば、目的に応じた適切なトレーニングを行うことが可能となり、パフォーマンスアップやケガ予防に役立つ」と記載されている。元陸上のトップアスリートが立ち上げたこのラン検定で1級を取得したJリーガーがいる。彼はなぜ、サッカー選手でありながら、走りを学んでいるのか。その理由を探った。(取材・文=藤井 雅彦)
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ラン検定1級を取得した宇賀神友弥は静かに、それでいて力強く頷いた。
「簡単な問題ではありませんでしたが、秋本(真吾)さんに指導してもらってきたことが詰まっていました。頭のなかで秋本さんから教わった座学と、実際に自分が体を動かしていることをリンクさせて、初めて正しい動きになる。合格点ギリギリでしたけど、学んできたことをアウトプットするような形。僕にとっては再確認であり、答え合わせのような作業でした」
宇賀神とスプリントコーチである秋本真吾氏の出会いは2014年に遡る。
知人を介して元プロ陸上選手に指導を受ける機会を得たが、当時は少々甘く見ていたのが本音。浦和レッズで活躍しているプライドもあってか「陸上とサッカーは違う」という固定観念を抱いていた。
だがトレーニングが始まると、すぐさま顔色を変えざるを得なくなる。鮮烈に覚えているのは、秋本氏が発した第一声だ。
「宇賀神さんは、まだまだ速く走れますよ」
実は、それなりに自信を持っていた。試合では90分間に渡ってタッチライン際を上下動するサイドバックやウイングバックを担い、主力としてフル稼働したシーズン直後だったのだから当然だろう。
ひとまず自信のスプリントを披露する。すると次に懸けられた言葉で、再び衝撃が走る。
「宇賀神さんは攣りやすいし、ケガをしやすい走り方ですね」
歯に衣着せぬ秋本氏の言葉に、大きなショックを受けた。同時に、彗星のごとく現れたスプリントコーチの虜になった。
走りの世界は、想像以上に奥が深かった。
「出会った頃の自分はダメな走り方のお手本のような走りでした(苦笑)。考えてみれば、自分の走りに着目したことがなかったんです。最初は足が速くなる方程式を座学で学び、効率よく走ることを学びました。秋本さんは『もっと速くなるし、絶対に良くなる。それによってサッカーのパフォーマンスも必ず上がる。僕が良くしてみせます』と熱っぽく訴えてくれて、心を動かされました。お互いに向上心があって、ギラギラしていたと思います」