サッカーは「世界をつなぐ」 フリースタイル元王者Tokura、W杯公式球に感じた多様性
いよいよ今年11月、4年に一度のサッカーの祭典、ワールドカップ(W杯)がカタールで開催される。いまだ先が見えない混沌とした世界にあって、サッカーボールは世界をつなぐ架け橋になり得るのか。
「とにかく落とさないことに集中」、新宿のビル屋上で披露したフリースタイル
いよいよ今年11月、4年に一度のサッカーの祭典、ワールドカップ(W杯)がカタールで開催される。いまだ先が見えない混沌とした世界にあって、サッカーボールは世界をつなぐ架け橋になり得るのか。
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アラビア語で「旅」を意味する「AL RIHLA(アル・リフラ)」と名付けられたカタールW杯の公式試合球は、現代サッカーの主流である試合展開の早さに対応するためにキックの正確性と飛行の安定性を実現したボールだ。
4月下旬のとある朝、新宿にあるビルの屋上で、「AL RIHLA」が軽快な音を立てて宙を待っていた。3月下旬に開催地・カタールを発ち、ヨーロッパのフランス、ドイツを経由して、イギリスのロンドンから日本の東京に降り立った「AL RIHLA」。スーツケースのなかに大切に仕舞われ運ばれてきた「AL RIHLA」を眠らない街・新宿の屋上に運んできたのは、フリースタイルフットボーラーの“Tokura”こと、徳田耕太郎氏だった。
たどり着いた屋上には落下防止用のフェンスは一切ない。高層ビルの森と明治神宮の開けた緑が背景を取り囲む。「とにかく落とさないことだけに集中してやり切った」。そう語ったフリースタイル界の世界王者(2012年)は、「1人ですべての責任を負うことが好き」で、「逆に自分を追い込まないと、ダメな時は本当にダメになってしまう」という。だからこそステージに上がる時には常に最悪を想定している。
「自分が努力をすれば、その分だけしっかりと自分の力になっていくし、力を発揮することができる。でも仕事になるとプレッシャーは計り知れないものがある。だからこそ、毎回現場に行く時には最悪を想定するんです。例えば、ステージからボールを落としたらどうしようとか。実際に落としたこともあって(苦笑)。すごく落ち込むんですけど、もう二度とミスしたくないと思って、また練習するんです。気づいたら、そういう“落とせない”というプレッシャーのなかでプレーする機会が増えたので、それをネガティブに捉えずにプラスに変えていこうと頑張って練習を積み重ねてきました」
ビル端の2メートル以内には近づけないという極限のなか、華麗な技を繰り出していく。最初は足下のコンクリートの凹凸を確認するように、動ける範囲や高さを感覚的に捉えるように。
「撮影前にあれやって、これやってって技の組み合わせを自分で考えてくるんですけど、撮影の現場を実際に見て、特に今回のような制限のある場所だと、これはできないなとか、これとこれはやりたいんだけどリスクが高いなとか、撮影しながらカメラマンさんやスタッフの皆さんの表情を見て考えながら技を修正してパフォーマンスしています」