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指導者が“分かった気”になったら終わり 名将の言葉に感じた「アップデート」の重要性

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回はプロの世界で戦う選手や指導者に求められる、能力を「アップデート」する感覚について。自身の経験や才能に満足することなく、常に高めていく姿勢が重要だと、名選手や名監督のエピソードを紹介しながら説いている。

世界一の“名将”とも呼ばれるジョゼップ・グアルディオラ監督、どのように自身をアップデートしてきたのか【写真:AP】
世界一の“名将”とも呼ばれるジョゼップ・グアルディオラ監督、どのように自身をアップデートしてきたのか【写真:AP】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:能力を日常的にアップデートする重要性

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回はプロの世界で戦う選手や指導者に求められる、能力を「アップデート」する感覚について。自身の経験や才能に満足することなく、常に高めていく姿勢が重要だと、名選手や名監督のエピソードを紹介しながら説いている。

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 育成の時点で、選手は能力を「アップデート」することを日常化できていないと、高いレベルでプレーを続けることは難しい。

「FC東京(の下部組織)では中学の頃から、“立ち向かえるか、乗り越えられるか”というメンタリティを叩き込まれてきました。それで乗り越えた時、“ぐっと行く”という感覚が自分のものになってきたんです。それが、今の自分につながっているんだと思います」

 日本代表MF橋本拳人(FCロストフ)は、育成年代での教えがプロとしての基盤になっていることを語っている。

 橋本は相手からボールを奪うだけでなく、味方をカバーするセンスも抜群で、2019年のシーズンにFC東京を優勝争いに導いた張本人と言える。海を渡った彼は攻撃面でもダイナミズムを発揮し、ロシアでのデビューシーズンでチーム1、2を争うゴールも決めている。ロシアリーグでポジションを奪うのは決して簡単ではない。マンマーキング戦術に対応し、1人のMFとして殻を破りつつある。

 こうした「アップデート」の感覚は、育成年代で身につけないと、プロ選手になってからすぐにできない。プロでキャリアがノッキングする選手の多くは、上書きをし、適応することに失敗している。弱点を克服し、長所をさらに伸ばすところまでいかないのだ。

 例えば、世界最高の選手になったリオネル・メッシは子供時代から負けず嫌いで、サッカーなら何をしても張り合った。おかげでヘディングやFKのように、決して得意でなかった分野も上達した。16歳でFCバルセロナのトップチームの練習に加わったが、ロナウジーニョなど有力選手のフェイントや体の使い方、ボールのインパクトをコピーし、自らに最適化し、アップデートできたという。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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