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「だって、大輔やもん」 恩師も期待せずにはいられない、高橋大輔の“夢を見させる力”

一番のお気に入りの演技は札幌でのNHK杯のSP

――高橋選手のスケートは、その表現に広がりを感じます。それが多くの人に愛される理由かもしれません。

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「大輔はリンクで物語を演じる感覚はなかったようです。バンクーバーオリンピックの『道』も、『映画、一回見たら?』と私は勧めたんですが、彼は曲からインスピレーションを受け、頭で考えるよりもフィーリングを大事にしていて。物語のあらすじは分かっているし、道化師のところとか、演じてはいるのですが。お客さんに『こう見て欲しい』よりも、『どう感じるか、好きにしてくれ』って押し付けない。あの映画って最後は悲劇というか、ちょっと救いようがないじゃないですか? でも大輔の演技は曲から感じられるものだから、人生賛歌のようなもので、救いがあって希望が見えると思うんです」

――高橋選手のプログラム、長光先生が一番のお気に入りはあるんですか?

「よく聞かれるんですが、みんな好きなんですよ。ただ、その場にいてすごく良かったと思うのは、札幌でのNHK杯(2011年11月)、ショートプログラムで演じた『イン・ザ・ガーデン・オブ・ソウルズ』で、本当に素敵でした。体のでき上がりも良かったんですが、“曲に体の細胞が全部反応しているわ!”って。その年の全日本は4回転トウループ+3回転トウループでノーミスでしたが、NHK杯の3回転+3回転のほうが好きですね」

(第7回へ続く)

(小宮 良之 / Yoshiyuki Komiya)

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長光歌子

関大アイススケート部コーチ 
1951年生まれ、兵庫県出身。66年の全日本ジュニア選手権で優勝するなど選手として実績を残すと、引退後は指導者として多くのスケーターを育てる。高橋大輔を中学時代から指導し、2010年バンクーバー五輪で銅メダル、同年の世界選手権で優勝に導いた。フィギュアスケートをこよなく愛し、現在は関大アイススケート部コーチを務める。

小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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