「粗野なれど、卑にあらず」 生涯修行を貫き、五輪連覇した最強柔道家・大野将平の魂
大野将平が語る大野将平「安きに流れて勝っても大野将平ではない」
「稽古は本当につらく苦しいものと自分も認識しています。正直、試合に出ること自体は簡単なこと。その中で勝ったり負けたりが生まれますが、東京五輪までやってきたような稽古ではなくても試合で勝つこともあったと思うんです。でも、それをやっても自分じゃない。修行という苦しいこと、つらいことを乗り越えて、その結果、試合で戦う。それが大野将平という人間だと思います」
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まさに修行僧のような生き様である。
「そういう姿勢で稽古に取り組み、たまたま東京五輪まで勝ち続けてこられた。そこから安きに流れ、楽な方を選んでしまうと、それはもう大野将平ではない。楽な選択をして試合に出ることは私にとっては妥協でしかありません。今後、もし試合に出る時はそうやって自分に苦悩と苦労を課して、重荷を背負わせてやらなければ、気が済まない性格。そう自分自身が一番理解しています」
誰よりも強い大野にとって、強さの定義は「弱さを知ることが強さだ」という。
「弱いことを知っているから、強くあろうとする。努力をする。俺は強いんだっていう傲慢な人間が努力しますか? 私はきっとしないと思う。もとから強い人間なんか絶対いない。弱さを経ての強さだと思うので、私はそれを凄く大事にしています」
五輪を2連覇してなお、自分は弱いと思う。「それを補うために稽古をする。自分が負けることを想定し、負けたくないからやる」。追い求めるのは大野将平が大野将平であり続けること。30歳、生涯修行を貫く男にゴールはない。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)