厳格な父が名ストライカーを育てる? 点取り屋の“執念”を植えつけた男と男の関係性
父は深い愛情を持ちながら、男として息子を突き放せるか
中学から国見へ進学するのだが、最初の50メートルで二人一組のトライアルに敗れた。悔しさで力が入らなかった。この時、見学に来ていた両親は慰めるどころか、無言で車に乗り込み、福岡へ戻ろうとし、大久保は自転車で必死に車を追いかけた。泣きながら叫び続けたが、「来るな」と怒られ、置いて行かれてしまった。再び、一人で悔しさに向き合ったという。
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勝負への執着は、こうした瞬間に生まれるのかもしれない。あるいは、それで破裂してしまう人もいるだろうが、ストライカーとして勝負するには不条理に向き合う必要がある。慰められていたら、戦いの衝動は収まってしまっていたはずだ。
父は深い愛情を持ちながら、男として息子を突き放せるか。独特な男と男の関係と言えるだろう。そこで息子は歯を食いしばり、父の愛情を求める。そこに理屈は存在しない。
やはり、ストライカーを論理的に育てるのは難しそうだ。
(小宮 良之 / Yoshiyuki Komiya)