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本田圭佑、C.ロナウドは「反骨心を力に変える天才」 10代で自ら確立した精神的支柱

C.ロナウドは「10歳ですでに大人だった」

 その代わりに、指導者は拠りどころになるものを子供たちに与えるべきだろう。それは昔だったら、「しごき」のようなもので、「これに耐えたのだから、なんでも乗り越えられる」というものだった。しかし、それはあまりに効率が悪かったし、弊害をも生み、もはや人権的にも許されない。

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 現場のコーチは、その点で創意工夫や人間性を求められるようになっている。もっとも、その教えはたいそうなものでなくていいし、頭でっかちの理論や理屈ではない。例えば、野球界における世界的スターになった大谷翔平のように「落ちているごみを拾ったら、それだけ運を拾える」という学生時代からの教えのようなもので、何気ない人生のヒントだ。

 子供自身、教わるだけでなく、自ら精神的支柱を立てられるか。

 それで成長の度合いは大きく変わる。

 筆者は、世界最高のサッカー選手の1人、クリスティアーノ・ロナウドが生まれたマデイラ島でルポ取材を行ったことがある。そこで、ロナウドの生育環境をつぶさに見た。坂の途中にある自宅はボロボロのあばら家で、父親は定職につけず、兄はドラッグ中毒で、母親が働いて家計を立て、夜まで1人なことが多かった。

 しかし、ロナウドは世の中を恨んでなどいない。彼にとっては、その「絶対的不利」という状況が自らを駆り立てる土台になったのだ。

「信じられないかもしれないが、ロナウドは10歳ですでに大人だった」

 当時、ロナウドがいたクラブのコーチだったアントニオ・メンドーサはそう話していた。

「1人の男として、自立しているように見えたね。自分の道をすでに自覚していて、子供特有の“隙”がなかった。いつも神経を尖らせ、雰囲気を読むのも上手かったよ。それがあまりに大人びていて悲しくもなったが、この状況では言動を控え、今はチームを盛り上げるために声を上げるとか、感覚的に知っていた。学校の勉強は不得意だったが、その意味ではとても賢かった。だから、チームメイトにも心酔されていた」

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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