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サッカーと“性格別”の適性ポジション C.ロナウドの恩師に見る指導者の必須能力

筆者が経験したGKならではの行動

 世界最高のディフェンダーになったカルレス・プジョルは、14歳まで運動靴でボールを蹴り、スパイクを履いたことがなかった。小さな村の出身で、試合をする人数合わせのためなら、GKだってやったという。バルサのトライアルのチャンスは17歳の時で、すでに遅すぎる年齢だったし、周囲は“記念受験”と捉えていた。

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 しかしプジョルは「自分が一番下手」と自覚しながらも、トライアルで全力を出し続けた。闘志が周りに伝播するほどだった。

「プジョル少年は確かに下手だった。でも常に100%の力を出し切っていた。それは簡単なことではない。責任感、犠牲、覚悟を感じさせ、試合で力以上のものを出し、別人のような選手に成長できるかも、と投資をしたんだ」

 当時のスカウトが語った「プジョルが合格した理由」だった。

 攻撃的選手としては才能が足りなかった。しかし実直な闘争心が考慮され、ディフェンダーに転向。以来、強大な敵と戦うたび、成長していったのである。

 鶏が先か、卵が先か――。ポジション的性格というのは必ずある。

 数年前、筆者は柏レイソルの選手と、柏市内の飲食店でランチをしていた。取材者として選手と対話を重ねるのは仕事の一部だけに、当然ごちそうすることにしているのだが、その日はレジで店員に「お代はいただいています」と言われ、唖然となった。当時、柏に在籍していたGK菅野孝憲も来店していた。個人的に面識はなかったが、自分が話していた選手の年長者で、2人分の食事代も払っていったのだ。

 これは、なかなかできる芸当ではない。

 GKならでは、の行動だ。

 1人だけ手を使える孤高のポジションなわけだが、1人でゴールは守れない。常に周りを意識し、謙虚に行動し、感謝しながら協力を求める。菅野は37歳になっても、J1でレギュラーとして活躍しているが、そういう気遣いを欠かさない人間だけが、長くゴールマウスを守れるのだろう。

 同じく40歳で横浜FCをJ1に昇格させ、41歳でJ2大宮アルディージャを救うために戦う南雄太も、似たような行動規範を示している。筆者とJ1の若いGKと3人でランチをした後、南は用事があって1人で先に帰った。代金を払おうとして、「お代はいただいています」というレジでの答えだった。「自分が払う」とか、そんな前置きをせず、颯爽と去るのだ。

 これはGKと一部ディフェンダーだけにある行動パターンだろう。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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