GKに必要な素養は「多少のクレイジーさ」 楢﨑正剛とランゲラックが語る“守護神論”
ランゲラックは楢﨑さんから「とても良い影響を受けました」
――お二人は2018年にチームメイトとしてプレーしていましたが、ランゲラック選手にとって、楢﨑さんはどのような存在ですか?
ランゲラック「実はグランパスに加入する以前からナラさんの存在は知っていました。長い間、日本代表で活躍したGKですからね。そのような偉大な選手と一緒にプレーする機会があって、とても良い影響を受けました。ナラさんが気づいていたかどうかは分かりませんが、GKとしてのテクニックやモチベーション、そして熱意を学びました」
楢﨑「僕にとっての現役ラストイヤーにミッチが加入したわけだけど、そのシーズンはコンディションの問題もあって苦しいことが多かったんだ。チーム全体や後輩選手に良い影響を与える存在でありたかったけど、それがなかなかできないシーズンでもあった。だから申し訳ないという気持ちがある。でもミッチがこうして質の高いプレーを見せてくれて、グランパスのゴールマウスを守る選手はレベルが高いと周囲に伝えてくれている。これは僕自身が加入する前からの伝統でもあるので、引き継いでくれているミッチには感謝しています」
ランゲラック「グランパスでの最初のシーズンは右も左も分かりませんでしたが、ナラさんがサポートしてくれたおかげでフィットできたと思います。それにチームを引っ張るナラさんにはオーラがありました。チームの伝統を引き継ぐために、自分も見習っていきたいと思います」
楢﨑「よろしく頼むよ。ところで、オーストラリアでもGKは変わっている人間が多いのかな? この企画に登場してもらった外国籍選手たちはこの意見に同意してくれるGKが多いんだ(笑)」
ランゲラック「確かに多少のクレイジーさは必要かもしれないですね(苦笑)」
楢﨑「オーストラリアもそうなんだ!(笑)。でも変わっているなかでも、『自分は普通だ』とみんな思っているんだよね」
ランゲラック「間違いないです(笑)。あとは、より細かい部分にこだわるという部分で、フィールドプレーヤーとは違いがあるのではないでしょうか。それこそクレイジーなくらいこだわらないと務まらないポジションだと思います」
楢﨑「素晴らしい。GKはミッチのような人格者だからこそ務まるポジションだね。いろいろな人に称賛されるべきタイミングだと思うので、今回はこうして対談できてうれしかったです。本当にありがとう!」
ランゲラック「こちらこそありがとうございました」
■楢﨑正剛
1976年4月15日生まれ、奈良県出身。1995年に奈良育英高から横浜フリューゲルスに加入。ルーキーながら正GKの座を射止めると、翌年にJリーグベストイレブンに初選出された。98年シーズン限りでの横浜フリューゲルス消滅が決まった後、99年に名古屋グランパスエイトへ移籍。2010年には、初のJ1リーグ優勝を経験し、GK初のMVPに輝いた。日本代表としても活躍し、国際大会では2000年のシドニー五輪(OA枠)、02年日韓W杯などに出場。19年1月に現役引退を発表し、現在は名古屋の「クラブスペシャルフェロー」に加え、「アカデミーダイレクター補佐」および「アカデミーGKコーチ」を兼任。21年からはJFAコーチとしても活躍している。