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海外挑戦は「若いほど良い」は幻想 18歳メッシの適応と「自己の確立」の重要性

久保建英も日本でプロ契約し土台を作った

 筆者はスペインで、多くの日本人少年選手の取材をした。彼らはまずスペイン語との格闘を余儀なくされ、とにかく苦労していた。どうにか語学を身につけ、スペイン人と行動を共にし、強い自己主張をし、同じ料理を食べるわけだが、どこかでストレスを抱えていた。言うまでもないが、スペイン人にはなり切ることはできない。

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 日本人は適応を真っ先に考えるが、アプローチとしては逆だろう。もし自己を確立していたら、あとは受け入れてもらう努力をするだけ。一方で自己の確立が脆弱だと、異国に流されてしまい、自立できないのだ。

 メッシがアルゼンチン人であることをよりどころにしたように、日本人もアイデンティティが必要になる。それは質実剛健さだったり、献身や勤勉さや技術習得が美徳とされる点だったりするかもしれないし、日本人が持つ原風景に対する美的意識や道徳かもしれない。それらはそこはかとなく、サッカーにおいても縮図になっているはずだ。

「海を越えるのは、若ければ若いほど良い」

 誤解を恐れずに言えば、それは幻想と言える。久保建英(マジョルカ)でさえ、一度、日本に戻ってきてFC東京でプロ契約を結び、苦労をしながら適応し、土台を作ることができた。チームや監督が求める守備の負担やインテンシティーに対し、最初は反発を覚えていたようだが、それを飲み込むことで飛躍していった。

 メッシという個性は、あまりに特別だ。

 翻って、日本人は日本人として世界で勝負できる余地がある。

 次回の題材だ。

(小宮 良之 / Yoshiyuki Komiya)

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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