なぜイ・ボミは愛されるのか 休養を経て語った“本音”と秘められた魅力
「私自身が幸せでないと、周りの人たちも幸せな気持ちでいられない」
「棄権したあとはすぐに家がある兵庫に帰って、ゴルフもせずに母とゆっくり過ごしました。7週連続で試合に出ていたことで、本当に疲れがたまっていて、プレーに集中できなくなっていたんです。『もう休みたい……』と思う自分がいました」
イ・ボミが続ける。
「韓国ツアーでプレーしていた時代も棄権は一度もしたことがありません。自分の体調が理由で棄権したのは初めてのことです。今思えば、応援してくれるファンや支えてくれるチームのために、いい姿を見せなきゃいけない、期待に応えなきゃいけないって強く思いすぎていたのかもしれません。私はスポーツ選手なので、結果で見せないといけないとどうしても思ってしまうんです。でも、今回こうして棄権したことで、健康でいること、元気でいることが大事ですし、私自身が幸せでないと、周りの人たちも幸せな気持ちでいられませんよね」
普通は自分のことだけ考えてゴルフすればいいものだ。だが、イ・ボミは周囲の人たちを幸せにしたいと本気で思っている。そうした心持に虜になってしまうゴルフファンの心境も分からなくない。
イ・ボミが試合を棄権して改めて思ったのは、“初心に戻ること”だった。
「私が日本に来た1年目とは、ガラリと状況が変わりました。周囲も、自分も……。だから初心を忘れないことですね。日本に初めて来たときの思いを忘れずに、残りの試合を楽しみたい」
今年、イ・ボミが出場する試合はスタンレーレディス後は残り6試合(富士通レディースは欠場)。“初心忘るべからず”と気持ちをリセットすることに成功したイ・ボミ。2年連続賞金女王に向け、視界は良好だ。
【了】
金 明昱●文 text by Myung-wook Kim
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images