あの「段ボールベッド」誕生舞台裏 耐荷重200kg、オリパラ選手たちに想い込めた工夫
試行錯誤で耐荷重200kg実現、その裏にオリパラ選手たちに込めた工夫と想い
この要望に応えられるように、と完成したのが、この段ボールベッドだった。ベッド下に荷物を置く空間を確保しつつ、ベッドの座面高を低くするのは難題。座面を下げるためにはマットレスを市販のものより薄くしなければいけないが、そうなればベッドにかかる負荷が狭い範囲に集中してしまう。
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従来品よりも薄いマットレスを生み出すと同時に、様々なテスト、検証を繰り返した結果、最も優れた耐久性を示したのが段ボールだった。テストでは木製フレームやパイプフレームのベッドでは壊れてしまった重量でも、段ボールベッドは壊れなかった。段ボールベッドの耐荷重は同社の発表では200キロとなっている。
これまでに例を見ない段ボール製のベッドということで、当初は組織委員会の中にも懐疑的な目はあった、と同社広報担当者は振り返る。だが、耐久実験の結果などをデータも示して理解を得て、段ボールベッドが実際に採用されることに決まった。横幅が90センチだったのも、今後入村してくる車椅子のパラリンピアンたちが必要な幅を確保するため、という大きな意味があった。
五輪に出場する選手たちがSNSなどを通じて世界に向けて発信された「段ボールベッド」。ネガティブな意見もメディアを通して伝えられたものの、実際のところ、ここまで組織委員会や同社に一切、苦情やクレーム、交換の依頼は届いていない。むしろ、初めて見た選手や各国関係者から「これがあの段ボールベッドね!」と関心を向けられ、そして好意的な声が多いという。
「SNSなどを見ても好評いただいていますし、実際に私たちが選手村でコミュニケーションをとっていても、ベッドにも、そしてマットレスにも好評いただいています。弊社としてもしっかり研究を重ねてきたベッドとマットレスでしたので、大変ありがたく思っています」と同社広報担当者は胸を撫で下ろす。
一躍、脚光を浴びることになった選手村の段ボールベッド。実際のところはオリンピアン、そしてこれから入村してくるパラリンピアンのことを考えた様々な工夫と想いが込められたものだったことを覚えておきたい。
(福谷 佑介 / Yusuke Fukutani)