東京五輪で考える日本と世界の性教育の差 選手村で配られるコンドームから見えること
大人が月経教育、性教育から目を逸らさず、子供たちと向き合うこと
しかし、私自身も現役時代は知識不足でした。
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発展途上国では性暴力が未だに残る過酷な環境があり、エイズによって命が奪われている現状が今でもある国がある。そういう現状を知らず、配布の意図も知らなかった。日本代表でも説明されることがなかった。そういう知識を早くから得ていたかったと、今になって思います。
変わっていくために、まずは大人が月経教育、性教育から目を逸らさず、子供たちと向き合うこと。
「1252プロジェクト」の講義は若い男の子も受けてもらっています。「月経の仕組みを知ってますか?」というクイズを出しながら一緒にやっていると、最初はおちゃらけているんですけど、だんだん真剣な顔になっていく。男の子たちも「こんなに大変だったんだ、月経って」と知る。
大人が真剣に向き合おうとしない姿勢は子供たちに伝わります。「口に出すのが恥ずかしい」「月経の話題は隠れてするもの」と思っていたらいけない。講義で触れた男の子のように、大人の振る舞い次第で受け止めてくれるはずです。
もう一つ、スポーツ界で「隠れてするもの」という意識を感じるのは恋愛です。私が10代の頃は「恋愛=悪」という風潮がありましたが、フランス人のコーチに言われたのは「恋愛の何がダメなの? やる気、出ないじゃないか。いい結果を出して誰が褒めてくれる?」と。
同じような縛りはいろんなところにあります。社会人なのに携帯電話を禁止にしている、休日は当日に伝えて予定を立てないようにさせている。最近では「日焼け止めを塗ってはいけない」というルールがあると聞き、理由は「日焼けしている方が強そうだから」で驚きました。
スポーツを通して、世界の人たちと関われる瞬間があるのに、すごく狭い世界にいる。競技がすべて、練習がすべて。世の中を知らない方が結果が出るという論調も悲しい。では、競技人生が終わったらどうなるのか。心配してしまうシチュエーションが多くあります。
すべて自分の選択だと思います。競技にとって良さそうだと思ったら恋愛もしたらいいと思うし、自分にあまり向いていないと思ったらやめればいい。一人一人がしっかりと考え、尊重される。その視点が、これからの時代は必要であると感じます。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)