五輪で考えるダイバーシティの意味 名将エディー氏「理解が深まれば日本の魅力広がる」
ダイバーシティへの理解が深まれば、日本の魅力がさらに広がる
ダイバーシティの実現という観点に立った時、日本は世界から遅れをとっていると言われていますが、私が東海大学ラグビー部の監督に就任した1996年と今とを比較すると、大きな変化を遂げたと思います。
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確かに、人種や性別などに対する日本の昔ながらの価値観は、まだ社会の中に見え隠れしています。米国でもまだ人権問題が大きな社会問題となっているように、考え方や価値観が完全に変わるまでは何世代もの時間がかかるでしょう。ですが、例えば今の20代の若者たちは高齢者に比べ、ダイバーシティに関する素晴らしい教育を受け、深い理解を持っています。これから先の未来は彼らが持つ価値観が主流となるわけですから、ダイバーシティの実現は加速するでしょう。
また、世界の目が日本の変化を促すことにもなりそうです。その一例が、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長だった森喜朗さんの辞任劇です。ある意味、あの一件は国と国との垣根が低くなり、デジタル化した現代を反映したものでした。もし30年前に同じことが起きたとしても、森さんのコメントは海外に発信されず、日本国内にとどまっていたのではないでしょうか。
でも、デジタル化した現代ではあっという間に世界に向けて発信され、英国のBBCニュースでもトップで扱われたほどです。グローバリゼーションが進む世の中だからこそ、ダイバーシティへの理解が遅れていたり、何か課題を抱えていたりする国や地域には、世界がそれを改善するように促す流れになっていると思います。
日本はラグビーワールドカップ2019のホスト国として素晴らしい成功を収め、この東京五輪・パラリンピックでは、特に高い水準を保つことが求められています。世界規模のスポーツイベントを開催するとなれば、多種多様な人々が集まるわけですから、当然ダイバーシティへの理解は深まらなければならない。こうして変化していくことは、素晴らしい国である日本が、さらにその魅力を広げることにも繋がります。
私はオーストラリア人の父と日系アメリカ人の母を持ちます。オーストラリアで生まれ育ち、縁あって日本、南アフリカ、イングランドで暮らしました。いろいろな国の文化や伝統を体験し、理解を深める機会を得たことは、とてもラッキーだったと思います。私はそれぞれの国と深い繋がりを感じています。
南アフリカ、日本、イングランドなど他国でコーチを務める時は、より理解を深めるため、事前にその土地の歴史や文化、国民性などについて勉強しました。なぜかというと、その国のアイデンティティーを大切にしたいと思うからです。例えば、以前に比べて日本で暮らす外国人の数が増えました。ダイバーシティという価値観の中で彼らの存在は日本人と同じように受け入れられるべきですが、同時に外国人もまた日本の文化や伝統はリスペクトしなければいけません。