【現地コラム】高木美帆の銀メダル、その瞬間― オレンジ色の客席で揺れた日の丸
飛び上がるように上った表彰台、最後に見えた表情
追いつけそうで追いつけない……苦しいか……だが、最後の1周でグンと加速した。一気にベルフスマを逆転、あっという間に突き放す。最終コーナーを回る。会場のボルテージが上がるのがわかる。メダルは取れる、あとは何色か……。わずかに金には届かなかった。
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力を出し尽くしたのだろう。膝に手をついて、しばらく動けなかった。それでも、顔を挙げ、観客席に手を振った。その姿を、ファンはスタンディングオベーションで称えた。「惜しかった! でも、オランダのメダル独占を崩したね!」。そんな興奮気味な声が聞こえてきた。
高木は「まだまだこれからです! 次は金メダル取りますよ!」と力強く話した。観客席で祈るように見守った関係者も「弾みになって良かった。前回の悔しさ、次の1000メートルで結果を出してくれると思います」と感無量の様子だった。
同時に、生での観戦はスピード感はテレビで見る以上に伝わってくるが、会場のモニターでは選手がアップになるシーンがなく、滑った後の表情が見えない。別の日本人ファンからは「泣いているのか、笑っているのか、気になる」という声も漏れてきた。
競技終了は午後11時前。終わった瞬間に席を立つファンが多く、表彰式まで残っているのは関係者が多数だった。だが、最後までいて良かった。
高木は表彰台に、飛び上がるように上った。両手を掲げ、何度も頭を下げた。胸には輝く銀メダル。ようやく表情がうかがえた。満面の笑みを浮かべる、その姿は同じ日本人として最高に誇らしかった。
(THE ANSWER編集部)