【月間表彰】元日本代表×チョン・ソンリョン対談…「GK心理として非常に嫌」と称えたキッカーとは
中村俊輔、マテウス…ソンリョン選手が語るFKの名手とは
――福森選手はJリーグ屈指のキッカーとして知られています。お二人が対戦してきた選手で印象的なキッカーはいますか?
楢﨑「福森選手はFKだけでなくCKもすごく危険なボールを蹴る。僕はあまり対戦経験がないけど、どのチームもとても苦労している印象があるよね。スピードがあって、狙っているポイントにしっかりと蹴れる。僕が対戦してきた世代だと、シュン(中村俊輔/現・横浜FC)のイメージに近い。ソンリョン選手にとって怖いキッカーはいる?」
ソンリョン「昨日、横浜FCとの試合だったんですけど、俊輔さんはとてもうまかったです(※この対談は6月3日に実施)。あとは名古屋グランパスのマテウス選手も危険なキッカーだと思います」
楢﨑「マテウス選手は福森選手とタイプが違って、無回転のキックを蹴るからGKとしては大変だよね。ボールの変化が読みにくい。フロンターレの強さは誰の目にも明らかだと思うけど、それでも試合の中でピンチが全くないわけではない。そういった場面をGKがしっかり食い止めるのか、それとも決められてしまうのかでは、その後の展開が大きく変わってくる。福森選手の直接FKの場面も1-0の状況で、もし決められて1-1になっていたら試合の行方は分からなかった」
ソンリョン「チームの調子は良いですが、自分ができるベストの仕事をやることを心掛けています。一試合、一試合に決勝のような気持ちで臨んでいるから、今の成績を残せているのだと思います」
楢﨑「今のフロンターレには、もし1失点しても2、3点取ってくれる信頼感があるはず。1失点したらその後が大変だと思って臨むのとは違うと思う。GKの心理としては、ある程度余裕を持って楽しみながら取り組めるんじゃない?」
ソンリョン「みんなでサッカーを楽しんでいるという感覚はあります。それにナラさんがおっしゃったように点を取ってくれるという信頼感があるので、積極的な守備ができています。それがいい結果につながっている部分もあると思います」
楢﨑「GKとして止めなければいけないところをしっかり止める。ソンリョン選手のプレーにはそれが随所に見えるから見逃さないでほしいと思うよ」
ソンリョン「フィールドプレーヤーを信じていますが、その反面で『すべてを信じてはいけない』という考えも持っています。どんなに優れた選手、チームでもミスは必ず起きてしまうので、GKとしていつも良い準備をしなければいけません」
楢﨑「僕自身は今、育成年代の指導をしているので、今のソンリョン選手の言葉を子どもたちに伝えるよ!」
ソンリョン「僕にも何か教えてください!」
楢﨑「僕からソンリョン選手に教えることは何もないよ(笑)」
――お二人は過去にJリーグの舞台以外で対戦経験があると耳にしました。
楢﨑「たしかソンリョン選手がまだ水原三星ブルーウイングスでプレーしていて、ACLで名古屋と対戦した時だよね。試合が終わってソンリョン選手からユニフォーム交換を申し込まれたのを覚えているよ」
ソンリョン「昔からナラさんのようなスタイルのGKが大好きなんです。あくまでも僕の個人的な考えですが、GKは常に落ち着いていないといけない。それでナラさんのプレーを昔から知っていて、見習うことが多いと感じていました。一喜一憂することなく常に落ち着いていて、それでチームを勝利に導く。『このスタイルだ!』と思いました」
楢﨑「自分もそのスタイルを貫いてきたので、ソンリョン選手のような素晴らしい選手にそうやって言ってもらえるのはすごくうれしい。確かにGKにはいろいろなタイプがいて、いろいろなスタイルがあるけど、僕とソンリョン選手は似ているタイプかもしれない」
ソンリョン「ナラさんに似ていると思ってもらえたらすごく光栄です」
楢﨑「そういえば近年、Jリーグでソンリョン選手を始めとした韓国人GKが活躍している流れがあるけど、その流れや理由についてどう思う?」
ソンリョン「日本人GKのレベルは高く、競争力も高いです。韓国人GKはヨーロッパで活躍した歴史がありません。それは今だけでなく過去も含めて、です。日本人GKは多くの選手がヨーロッパでプレーしていますし、それが水準の高さを物語っていると思います。僕自身、日本でプレーするようになって見習うべき点がたくさんありますし、育成年代の指導もレベルが高いと感じます」
楢﨑「日本人は隣の芝生が青く見えてしまう性格なのかな(笑)。でも、韓国人GKが増えたことに刺激を受けて力を入れている部分も少なからずあると思う。育成に関しては、地道な努力を続けてきたことで、少しずつ成果が出てきたかもしれない」