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大学には「年俸10億円監督」が存在 高校運動部も“勝敗”でコーチの報酬に影響するか

この学区の高校アメフト部は8~11月の活動で指導399時間、報酬65万円

 ここまで読んでいただければ、勝敗では評価されていないことがわかるだろう。

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 競技についての知識や技術指導、試合における采配も求められているが、どちらかといえば、学校や州の運動協会が定めた規則に従って安全に運動部を運営しているか、保護者や他の教員、関係者と良好な関係を作っているかに重きが置かれているといえる。運動部員の生徒が成長できるように、評価とフィードバックすることが求められ、学業面にも目を配る。また、運動部員が大学運動部からリクルートされたときにはサポートをするなどである。

 運動部のコーチは、これらを記した勤務評価書を事前に受け取っており、何が評価されるのかを理解してから指導をスタートさせる。最終的に評価をするのは校長だが、各中学校や高校には運動部全体を見守る管理職がおり、この管理職が練習や試合でのコーチの仕事ぶりを見ているようだ。

 これらの勤務評価は指導報酬には反映されていない。

 ちなみに、この学区の高校アメリカンフットボール部は8月から11月まで活動し、指導者に求められる労働時間はシーズン前の準備も含めて総計399時間と職務記述書に示されている。指導に要する総計399時間の報酬は、5985ドル(約65万2156円)で、時間給に換算すれば15ドル(約1634円)。他の運動部も指導内容とそれに要する時間が職務記述書に書かれていて、時間あたり約15ドルが支払われている。

 時給15ドルは高いのか、安いのか。メリーランド州が定めている最低時給は11.75ドル(約1280円)である。州の最低賃金よりも、やや高い金額といえるが、上記に挙げた運動部指導に求められる勤務評価項目から鑑みれば、職務内容のわりには、報酬が抑えられているといえるのではないか。日本で運動部活動を担う教員は、平日の活動の指導には手当が支払われていないので、それと比べれば、時給15ドルの支払いはとても恵まれている。しかし、米国の運動部活動も、平日の夕方の数時間、1年のうち3~4か月の仕事であり、お金のために選ぶ仕事としては条件が良いとはいえず、米国でも、運動部活動の指導は、教員や外部指導者の意欲に支えられていると、筆者は感じている。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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