閉塞感ある今をどう生きるのか ゴールボール女子日本代表3選手に見るヒント
「今、この瞬間をいかに大事に過ごしていくか」「自分が出した言葉の強さってすごくある」
先天性白皮症で生まれつき弱視の欠端は幼い頃、スポーツが苦手だったという。特に球技はボールの行方を目で追いきれず、体に当たるボールが痛くて怖かった。だが、高校生の時、友人の誘いで始めたゴールボールは、全員が目隠しをして同じ条件で臨むスポーツ。「人生を変えた競技」と出会い、今では元プロ野球選手の父・光則氏(横浜など)から受け継いだ力強い回転投げで、日本のポイントゲッターになっている。
小宮は一般企業に就職後、浦田は大学在学時に網膜色素変性症を発症し、両眼はほぼ全盲に近い。はっきりと見えていた世界が見えなくなった。元々持っていたものを失う悲しみ、苦しみは想像すらできないが、今の二人はそんな様子を微塵も感じさせない。浦田は言う。
「目が見えなくなって挫折を感じたこともありますし、ゴールボールを通じても、これ以上競技を続けられないと思うくらい苦しい時期や落ちた時期もありました。でも、今感じるのは、いい時があれば必ずパッとしない時はある。パッとしなかったり、上手くいかない、何をやってもダメだなっていう時期があっても、またいい時がやってくる。『諸行無常』という言葉があるんですけど、同じ状況がずっと続くわけではないからこそ、今、この瞬間をいかに大事に過ごしていくか。悪いなら悪いなりに、自分の中で今日をどれだけ悔いなく丁寧に過ごせるか。人生ってその積み重ねだと思うんです。いい時も悪い時も本当にかけがえのない時間。今を大事にすることを意識して、日々を過ごしています」
小宮も続く。
「視覚障がい者になって、受け入れられないこともありました。ただ、自分なりの方法でどうやったらできるのか、今何をできるのかを感じながら日々を送る中で、まず現状を受け入れることが大切だと感じるようになりました。もう一つ、日々何が大切かと思うと『自分が発する言葉』ですね。自分が出した言葉の強さってすごくあるし、自分に返ってくるもの。言葉の重みをしっかり意識して、ありがとうという感謝の気持ちだったり、自分は運が強いと声に出してみたり、プラスになるような言葉を敢えて発信しています。今ここに自分がいられること自体が奇跡的。いろいろなことに感謝しながら日々を送っています」
困難を乗り越えた強さ、仲間を思いやる優しさを持つからこそ生まれる3人の笑顔。閉塞感が漂う今を生き抜くヒントが隠されていそうだ。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)