18歳キャンプ初日に自信喪失 不安に駆られた元ロッテ選手が「救われた」コーチの言葉
山下氏に教えられた「打者は打者と対戦しない」
キャンプ2日目、肘井さんは正直な気持ちを山下氏に打ち明けた。「ヤバいっす、バッティング恥ずかしいです」。山下氏は笑い飛ばし、不安を取り除いてくれたという。
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「山下コーチからは『お前が今、あいつらと同じくらい打ってたらドラ1で入ってきてるわ!(笑)』と。G.G.佐藤さんたちと同じくらいの年になったときに、超えていたらいいんだと言われて『あ、そうやな』ってホッとしましたね」
18歳の育成選手に、即戦力の実力が求められているわけではない。十分理解していたつもりでも、現実を目の当たりにして気づかぬうちに焦ってしまっていた。将来、チームを支える力を時間をかけてつけてくれたらいい――。肘井さんは現在地を見つめながら練習出来るようになった。
「あの言葉に救われましたね。確かに、打者は打者と対戦しないんですよね。相手投手と対戦する。そこを忘れてはいけないなと」
その後、メキメキと実力をつけた肘井さんは、プロ2年目の15年3月に支配下選手登録を勝ち取ると、同年は19歳で開幕1軍入りを果たした。故障もあり、23歳を迎える前に現役引退を選択したため「フタを開けてみたらG.G.佐藤さんたちの年齢になる前に現役が終わってしまった(笑)」とも話すが、山下氏の言葉で成長できたことは間違いない。
18歳の自分と同じような不安に駆られる選手もいるだろうと感じている。1軍で今すぐ活躍しなくたっていい。地に足をつけ、将来を見据えて頑張ってほしいと願っている。
■肘井竜蔵(ひじい・りゅうぞう)/日本プロ野球選手会事務局職員
1995年11月13日、兵庫県出身。北条高では甲子園出場なしも、強肩強打の捕手として通算46本塁打をマーク。13年育成ドラフト1位でロッテに入団。プロ2年目の15年3月に支配下選手登録され、同年の開幕1軍入り。4月2日の日本ハム戦でプロ初安打、初打点をマークした。16年にファームでサイクル安打を達成、17年には1軍で自己最多となる18試合に出場するも、翌18年10月に戦力外通告を受け現役引退。19年1月に日本プロ野球選手会事務局に入局した。現役時代の身長・体重は182センチ、88キロ。右投左打。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)