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両膝に8度メスを入れた北嶋秀朗が語る 「怪我と向き合わなくていい」の真意とは

北嶋が息子に伝えた“金言”とは【写真提供:大宮アルディージャ】
北嶋が息子に伝えた“金言”とは【写真提供:大宮アルディージャ】

父として怪我をした息子に伝えた「怪我と隣同士で歩いたらいい」

 17年間のプロ生活を終えてピッチに別れを告げた翌朝、北嶋は現役時代の癖で、膝と会話した。すぐに「もう機嫌をうかがわなくていいんだ」と気づいた瞬間、安堵以上に寂しい感情が押し寄せてきた。

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 今でも階段をスムーズに降りることができず、坂道の下りも横向きにならないと難しい。両膝のクッション役となる軟骨がないためで、事情を知らない人が見ると違和感を覚えるかもしれない。プロサッカー選手として幾多の激闘を戦い抜き、盟友の膝とともに歩んだ証拠である。

 引退して指導者となり、怪我とともに歩んだ経験は確実に生きている。そして後輩たちに伝えたいことがある。

「怪我との向き合い方にはいろいろな形があります。サッカーと連動させたほうがいい選手もいるし、反対に僕のような考え方もある。ただ少なくとも、昔の自分の影は追いかけないほうがいい。怪我をする以前の自分はもっと速く走れた、もっと俊敏に動けたと考えてもネガティブな感情にしかならない。大切なのは昨日の自分より今日の自分が成長していること。そして今日の自分よりも明日の自分を成長させること。それだけでいいんです」

 北嶋には高校2年生の長男がいる。父親と同じようにサッカーに没頭し、ストライカーとしてゴールを決めることに夢中だ。

 その愛息が今年になって膝の前十字靭帯を負傷し、復帰まで8か月から10か月かかる大怪我を負ってしまった。自分が何もできない間に仲間やライバルが先を行く景色に、どうしても気持ちが暗くなる。息子が落ち込む姿を見つけた北嶋はそっと声をかけた。

「恨んだり、妬んだりするのではなく、怪我と隣同士に歩いたらいい。怪我と一緒に歩いて、一緒に成長するんだ。きっとできる」

 幾多の困難を友だちの膝とともに乗り越えてきた父の言葉に、嘘偽りはない。

北嶋秀朗
1978年5月23日、千葉県生まれ。市立船橋高校時代に、全国高校サッカー選手権大会で2度の優勝、得点王に輝いた。卒業後に柏レイソルへ加入。プロ3年目からはチームのエースとして活躍、2000年にはキャリアハイとなる18ゴールを挙げた。柏レイソル、清水エスパルス、ロアッソ熊本と3クラブでプレーし、2013年に現役を引退。指導者の道へ進み、2020シーズンは大宮アルディージャのトップチームコーチとして、後輩たちの指導にあたった。17年に及ぶ現役時代のJリーグ通算記録は303試合出場、73得点。

(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)

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