五輪の舞台に届かなかったマラソン人生 それでも出会えた「新しい自分」
マラソンから得た人生訓の一つは「石の上にも三年」
マラソンから得た人生訓の一つが「石の上にも三年」である。これは「成し遂げるには、忍耐強く続けていることが大切」という意味だと解釈している。
「まずは我慢して続けてみる。そうすることで勉強になるものはあるし、すぐに環境を変えるというのは私の場合、なかったですね。続けることが大切かな、と」
忍耐強く頑張っても、マラソンでも五輪に出るという目標は叶えられなかった。しかし彼女に悔いはない。精いっぱいやれるだけのことはやったという自負があるからに他ならない。
「“夢は叶う”という言葉を、私は残念ながら胸を張って申し上げることはできません。ただ、私自身の体験から言えることは一生懸命頑張っていたら、夢の近くにまでは到達できるのかな、と。私自身、2003年の世界陸上で金メダルを取りたいと宣言していましたが、3位に終わりました。でも金メダルという目標がなかったら、銅メダルも取れていなかったんじゃないかと感じました。苦しいときにこそ自分の夢を心から信じて一生懸命頑張っていれば、たとえその夢が叶わなかったとしても近くまで行けるんだよってことは胸を張って堂々と言えます」
人生という長いレースに勝者も敗者もない。
自分らしく一生懸命頑張って、めげることなく前に進んでいく力。マラソンとの出会いによって、千葉はメダル以上のものを手にすることができたのである。
【了】
二宮寿朗●文 text by Toshio Ninomiya