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日本の傾向と逆行か なぜ、米国の中学で多くの生徒に「部活参加」を推奨し始めたのか

抱えている問題の根本は同じ、「お金」と「見守る大人」の不足にどう対応?

 他にノミネートされた中学校では、対外試合ではなく、学校内でチームを編成して、試合形式を楽しんでいるもの。また、農村部の学校区では、農業の繁忙期を避けて運動部活動のシーズンを組み、家業の手伝いのために参加できない子どもを減らせるように対応している。

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 日本では、運動部活動を指導する教員や参加している生徒の負担が大きいことが問題になっている。生徒を部活動から解放しよう。教員が、何らかの部活動の指導を半ば強制的に押し付けられることをなくそうという動きが活発になっている。できるだけ多くの生徒が運動部に参加できるようにという今回のアスペンのノミネート基準は、日本とは正反対のベクトルのようにも見える。

 しかし、抱えている問題の根本は同じだ。できるだけ多くの生徒に運動部での活動の機会を与えるためには「お金」と「見守る大人」が必要になる。その不足にどのように対応するか、だ。日本ではお金と見守る大人の問題に、これまでは学校の教員が仕事の一部として支えてきたが、無償での長時間労働につながっていると指摘されている。

 アスペンがノミネートした学校の事例でも、財源と人をどのように確保するのかが紹介されている。

 正攻法は各州政府や地方自治体から補助金や助成金を得ること。多くの研究結果で明らかになっている運動部活動の恩恵を提示し、いかに子どもの教育や成長に役立つのかを交渉と説得の材料にし、お金の支援をしてもらう。

 昨年、このサミットで、学校運動部に参加した生徒のほうが、そうでない子どもよりも罪を犯す率が低いというデータを見せ、「将来的に刑務所にかかるコストを削減できる」と助成金や金銭的支援を申請することもあると聞いた。

 前述したハワイのキング中学校では、より多くの生徒に運動部活動に入ってもらえるようプログラムをスタートしたが、当初、活動を見守る教員やスタッフは無償のボランティアだった。しかし、子どもたちの教育、健康、成長に必要な活動であるとして、州政府などに働きかけ、現在は見守る教員にも手当が支払われるようになったという。

 日本では不可能だろうが、米国では公立学校でも寄付やスポンサーを募っているケースもある。また、地域の非営利団体の放課後活動との連携、他校の運動部と統合などで乗り切っているケースもある。関心を持っている保護者や地域の人にボランティアで活動の見守り、指導をしてもらいやすくするのには、どうしたらよいか、も工夫している。

 今回のサミットでもいろいろな策が共有されたが、「お金」と「信頼できる大人」を手配することは、米国でも簡単にはいかない。

 米国では、一部ではあるが、トライアウトを廃止するなどで、できるだけ多くの生徒が運動部活動に参加してほしいという動きがある。ただし、日本の一部の学校のように正規の授業終了後、全生徒に何らかの部活動に参加することを義務づける、というのは「禁じ手」だ。今回、紹介された学校では、子どもたちが自然と足を向けたくなるような雰囲気づくりに努め、活動内容についても新しい試みをしている。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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