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なぜ「腸が一番大事」なのか 元日本代表MFが現役時代に驚かされたトレーナーの指摘

現役最後のシーズンに転機、AuB株式会社を設立

 こうしてやがて転機が訪れる。現役最後のシーズンとなった2015年6月、便を調べている人がいると聞き会ってみると、ある発言が将来を左右する大きな引き金になった。

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「特徴的な被験者を調べると大きな発見に繋がるものなんです」

 鈴木は一瞬息を呑んだ。

「特徴的な被験者?……たくさんいますよ!」

 あとは一気呵成だった。4か月後、鈴木は複数のメンバーとともに、アスリートの腸を研究するAuB株式会社を設立する。

 実は引退の少し前には、決断を促す出来事もあった。鈴木は長年、レッズを応援し続けてくれたサポーターと話す機会があった。

「最近お客さんが減っているので、またスタジアムに来てくださいよ」

 Jリーグ草創期からの年季の入ったサポーターは答えた。

「Jリーグができた時は、オレもまだ40歳。でも、もうそれから20年が経った。試合中は飛び跳ねながら応援をして帰ると、翌朝からは仕事。さすがに堪えるよ」

 そうか、人は年齢を重ねると、だんだん好きなことができなくなるんだな……。鈴木は自分の両親を思い浮かべて実感した。

「それならサッカー選手をしてきたことで、何かファンに還元できることはないだろうか」

 新会社には、そんな想いが込められていた。(文中敬称略)

[プロフィール]
鈴木啓太(すずき・けいた)

1981年7月8日生まれ、静岡県出身。東海大翔洋高校を卒業後、2000年に浦和レッズに加入。攻守を支えるボランチとしてレギュラーの座をつかむと06年のJリーグ優勝、07年AFCチャンピオンズリーグ制覇などのタイトル獲得に貢献した。15年の現役引退まで浦和一筋を貫き、J1通算379試合10得点を記録。日本代表としても28試合に出場した。現在は自ら設立したAuB株式会社の代表取締役を務め、腸内細菌の研究などを進めている。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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