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「お金の壁」でスポーツをやめる子どもたち 「プレー機会の平等」を目指す米国の動き

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回のテーマは「スポーツのプレー機会の『お金の壁』」について。

子供がスポーツをするにあたって直面する「お金の壁」とは【写真:Getty Images】
子供がスポーツをするにあたって直面する「お金の壁」とは【写真:Getty Images】

連載「Sports From USA」―今回は「スポーツのプレー機会の『お金の壁』」

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回のテーマは「スポーツのプレー機会の『お金の壁』」について。

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 昨年の4月15日のことだった。私はドジャースタジアムで、ジャッキー・ロビンソンのご遺族に取材をする機会があった。

 娘のシャロンロさんは「力のある選手は、誰にでも平等にプレーの機会があるべき」と話した。

 ジャッキー・ロビンソンは、メジャーリーグの人種の壁を破った選手だ。1885年以降、メジャーリーグは白人以外の選手を受け入れていなかったのだが、ロビンソンは1947年にドジャースと契約。グラウンド内外での差別に打ち克って後に続く選手たちに道を開いた。

 ロビンソンが人種の壁を破り、しばらくは多くの黒人選手が続いたが、現在、メジャーリーグのアフリカ系米国人選手は全体の8%を切っている。

 なぜ、野球をする黒人選手が少ないのか。今年のジャッキー・ロビンソンデーだった8月28日にブルージェイズの先発投手、タイワン・ウォーカーは理由のひとつをこのように話している。「僕が子どものとき、野球はとてもお金がかかった。競技チーム、移動、用具など。今は用具を寄付したり、そういったものを支援したりする組織があるので、それを続けていかなくてはいけない」

(今年は新型コロナウイルスの影響でメジャーリーグは7月下旬に開幕。4月15日には野球ができない状況だったため、ジャッキー・ロビンソンデーを8月28日にした。ドジャースとロビンソンが初めてメジャーリーグ入りについて話をした日だったといわれている)

 ウォーカーの挙げた理由は今でもあてはまるし、野球以外のスポーツにもあてはまる。

 米アスペン研究所が2018年に発表した調査によると、6歳から12歳までの子どもに「この1年間に1日でもチームスポーツをプレーしたか」と質問したところ、世帯収入によって回答に差があった。

 世帯収入2万5000ドル(約263万円)以下では「はい」と答えたのは34.1%にとどまっているが、世帯年収10万ドル(約1050万円)以上では、69%に達している。

 2万5000ドル(約263万円)から5万ドル(約527万円)未満は44.6%、
 5万ドル(約527万円)から7万5000ドル(約790万円)未満は55.6%、
 7万5000ドル(約790万円)以上10万ドル(約1050万円)未満は64%だ。

 この質問の裏返しの内容になるが、1年間にどのようなスポーツもしなかった子どもは、年収10万ドル(約105万円)以上の家庭では10.9%だったのに対し、年収2万5000ドル(約263万円)以下の家庭では30.5%にのぼる。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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