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「30回やっても勝てない相手」が本気で挑むW杯 “1-0”に潜む日本と世界の差

世界的ストライカーの歓喜と本気…日本が実感したW杯の重みと醍醐味

 豪華メンバーを揃えたアルゼンチンは、前半に日本の守備陣の混乱に乗じて、ガブリエル・バティストゥータが均衡を破るが、その後は追加点を奪えぬまま試合は推移していった。

 冒頭の言葉は、この大会でボランチとして攻守に貢献した名波浩(現・ジュビロ磐田監督)のものである。

「戦う前には、10回やって1回勝てるか、などという論議が出ていましたが、僕の中では30回やって1回も勝てないという思いもあった。でもそれだけの相手が、もう75分以降は、残り時間の使い方でも、球際へのアプローチでも、1-0で終わろうと必死でした。別にアルゼンチンは1-0の美学を持っているとは思えない国ですからね」

 世界的なトップストライカーのガブリエル・バティストゥータが、日本戦の先制ゴールを派手にジャンプして歓喜し、優勝候補が初出場のアジア代表に対して、目の色を変えて1-0を死守しようとする。そこに日本代表選手たちは、W杯の重みと醍醐味を実感した。

 アルゼンチンに1点差負けは、最初の一歩としては上出来だった。だがこの1点の違いが、想像以上に詰め切れない距離であることを、その後の日本サッカー界は噛みしめてきたとも言える。

【了】

加部究●文 text by Kiwamu Kabe


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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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