丸刈り強制だった競輪学校の1年間 ケイリン脇本雄太が知る、真の「自主性」の意味
高校生への授業で伝えたかった「夢に近づく方法」
高1で競技を始めてから今年で17年目。ようやくたどり着いた「自主性」の本当の大切さを、高校生に伝える機会があった。8月8日に参加した「オンラインエール授業」だ。「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する企画。インターハイ中止により、目標を失った高校生をトップ選手らがオンラインで激励し、「いまとこれから」を話し合う。
全国の自転車競技部の学生が参加した1時間の授業。“脇本先生”は、挙手制で聞きたいことを募った場面を振り返った。
「声に出して『僕質問あります!』というくらいの姿勢が、一番大事だと思う。自主性、自発性をもって質問をするくらいの気持ちがないと、今後につながっていかない」
自主性とはすなわち、覚悟を持って自ら考え、行動すること。質問の機会があれば、自分が考えていることを聞いてみてほしい。その姿勢がいつか、実を結ぶと伝えたかった。
ロードレーサーになるのが夢だという学生から、高校時代の練習でどのようなことを考えていたのかを質問された際も、考えること、行動することの大切さを語った。
「最終的にはどういう風に強くなるのかというのを考えながら過ごさないと時間を無駄にしてしまう可能性がある。今日の目標はコレ、というのを決めながらやるのを、僕の中では気を付けながらやっていた。
ロードレーサーになりたいと思うのであれば『こうしたらできるんじゃないか』というのを行動するのが一番大事。例えば実業団に入るというのもそうだし、海外に行って活躍したいのであれば、どうすれば海外で活躍できるかを少しずつ考える必要があるのかなと思う。いろんな問題があって、それをどう解決していくかを早い段階で考えるのが大事」
今回インタビューをしたのは、高校生への授業を終えた直後。自身が大きく“回り道”をして気付いた自主性の大切さに、10代の高校生がたどり着くのは容易でないことは十分理解している。ただ、考えて口に出し、実行することで、夢に近づけると信じている。
「今の時代で考えたら、ネット環境が優れていて、口コミとかでも自分の意見が書ける。でも、ネットで言うのではなく、自分自身で声に出して、例えば先生に言うとかいうのがないと“覚悟”という意味では足りないと思う。
持つ夢は、どれだけ大きくても全然いい。夢を持ったからには、実現するための小さな目標をどれだけ作れるかというのが大事。例えば五輪でメダルを取りたいという目標があっても、具体性がなければ実現しない。ちょっとずつ目標を達成するために段階的にやらなければならないものを作る必要がある。それをいかに小さく作れるか。実現するための目標をいくつ作れるかというのが大事だと思う」
小さな目標を作り、達成していく。そうして脇本は本当の「自主性」にも気付けた。リオとは違う自分が臨む東京五輪。授業を受けた子供たちに、メダル獲得の勇姿を見せるつもりだ。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)