障がい者と本気で戦い、変わった人生観 元JリーグGKブラインドサッカー挑戦の告白
「僕からしたら『オリパラ』ではなく、2つともオリンピック」
最後に、1年延期された東京パラリンピックに対する思いを聞いた。
2年半、戦ってきたブラインドサッカーの仲間たちが、あるいは彼らと同じように競技に懸けてきたパラアスリートたちが、4年に一度の舞台で大いにスポットライトを浴びてほしい。榎本にとってはきっと、そんな思いがあるではないかと思った。
しかし、話を振ると「その前にオリンピックをやりますよね。僕は何もそこと変わらないで見ていてほしいのですよ」とやんわりと制した。そこには、胸を打つ真意があった。
「僕からしてみたら『オリパラ』じゃなく、2つともオリンピックなので。2つのオリンピックとして、しっかりと見て、凄さを感じてほしい。ただただ、それだけです。勝っても負けても、選手たちの頑張りは間違いなくあるので称賛してほしいし。たとえ上手くいかなかった時でも称賛してほしいけれど。
でも、やっぱり叱咤激励というか、どこかで『いや、もっとできたかな』という言葉も一方で生まれないといけないと思う。選手たちが満足してしまってはダメだから。『よく頑張った』という声と『もっとやれた』という声と、その両方を届けてほしいという気持ちがあるかな」
そう言った後で、榎本はニヤリと笑った。
「僕はそういう風に観て、ブラインドサッカーの彼らには伝えようと思ってますよ」
健常者と障がい者の“隔たり”を取っ払い、ともに本気で戦ってきたからこそ言える言葉。異例の挑戦をした元Jリーグ守護神は“チームメート”を今も思い続けている。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)