8度の手術を経験した「松坂世代」右腕 度重なる復活の裏に“逆転の発想”
近藤 俊哉●写真 photo by Toshiya Kondo
ふとした瞬間に涙が溢れ出たことも―
ケガによって何度も絶望を味わったこともまた事実だ。
2度目のトミー・ジョン手術を受けたのが2013年4月。横浜DeNAベイスターズ戦で途中降板し、腱の再断裂が検査で判明した際には「凄くショックでした。ふとした瞬間に涙が溢れ出ることもあった」と語っている。しかし後悔はなかった。ケガを怖れることなく、バッターに立ち向かったうえでの結果だったからだ。
翌年には再手術を行ない、結果的に2年以上、戦列から離れることになった。だが、2015年6月に814日ぶりに1軍のマウンドに立ち、7月11日の横浜DeNA戦で1019日ぶりの勝利投手となる。
館山の強みは「逆転の発想」ともうひとつは、「強い信念」である。力勝負をモットーとする自分のスタイルを貫くことを決して崩そうとしていない。
「好きで始めた野球が、仕事にできているわけじゃないですか。でもいつか必ずやめるときがくる。そのときに心の底から後悔しないで終われるかどうか。そう思うと、ケガを考えずに思い切ってやっていいんじゃないか、と。ケガをするのはそれなりに原因があるとは思うんですけど、このスタイルを変えずにここまでやってくることができた。自分をプロ野球選手にしてくれたこの環境にとっても、自分にとっても正直に(今のスタイルを)求め続けたいというのがありました」
館山昌平はいつなんどきも、自分らしくマウンドに立つ――。
【了】
二宮寿朗●文 text by Toshio Ninomiya
近藤 俊哉●写真 photo by Toshiya Kondo