8度の手術を経験した「松坂世代」右腕 度重なる復活の裏に“逆転の発想”
近藤 俊哉●写真 photo by Toshiya Kondo
考えることは「苦」ではない、「しょっちゅうくだらないことを考えている」
考えるということ。
もともと、野球エリートではない。日大藤沢高時代、松坂大輔の好敵手であった彼は日大からドラフト3位でヤクルト入り。右ヒジの手術を経て初勝利をつかんだのは、プロ入り3年目だった。サイドスローへの転向、多彩な球種など必要なものはないかと己に問いかけ、自分を変化させていった。
ただ、館山にとって考えることは「苦」にならない。野球を楽しもうとしているからこそ、新しい発見に出会うのかもしれない。
「僕の場合、しょっちゅうくだらないことを考えています(笑)。いろんな人との会話のなかで、ふざけたことを言い合いながらもヒントがあったりする。遊び半分で取り入れてみて、いいなと思ったら勇気を持って使ってみるとか。野球を好きで始めて、まだまだうまくなれるんじゃないかって思っているので、野球のことを考えるのはとても楽しいですね。
たとえばこれまで抑えてきたバッターに決勝打を打たれたら、ようやくやっつけたと思っているんだろうなとか、相手のスコアラーさんは今日きっとおいしいお酒を飲んでいるんだろうなとか、そういうことを考えたりもします。考えて楽しんでいる場合じゃないんですけどね(笑)。まあでも、勝ったらうれしいし、負けたら悔しい。仮に負けたとしても、次にやり返せるチャンスが巡ってくるわけじゃないですか」
彼はそう言って、フッと笑った。