なでしこ長谷川唯は「毎日の練習」が幸せ 1つの目標に依存しない新アスリート思考
サッカー女子日本代表MF長谷川唯(日テレ・ベレーザ)が「THE ANSWER」のインタビューに応じ、独自の「モチベーション・コントロール」について語った。東京五輪でメダル獲得が期待される、なでしこジャパンの司令塔は、1年延期になった大舞台について「自分はオリンピックでモチベーションを保っていたわけではないので」と泰然自若。果たして、その真意とは――。「落ち込むことがあまりない」「目標は何個もあった方がいい」。アスリートとして新しい価値観を表現している23歳の思考に迫った。
目標の大小に幸せが比例しない、なでしこジャパン23歳司令塔の価値観
サッカー女子日本代表MF長谷川唯(日テレ・ベレーザ)が「THE ANSWER」のインタビューに応じ、独自の「モチベーション・コントロール」について語った。東京五輪でメダル獲得が期待される、なでしこジャパンの司令塔は、1年延期になった大舞台について「自分はオリンピックでモチベーションを保っていたわけではないので」と泰然自若。果たして、その真意とは――。「落ち込むことがあまりない」「目標は何個もあった方がいい」。アスリートとして新しい価値観を表現している23歳の思考に迫った。
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虚を突かれた。ちょっと申し訳なさそうに、長谷川唯は笑った。
「なんか、私、『落ち込む』っていうのが、あまり分からなくて……」
しかし、この言葉が、彼女の独自の感性を表す象徴でもあった。
今年、新型コロナウイルス感染拡大により、スポーツ界が受けた影響は計り知れない。最も大きなインパクトを与えたのが、東京五輪の1年延期。4年に一度にかけた舞台、それも一生に一度あるかないかの母国開催だ。多くのアスリートが「2020年夏」にすべてを捧げてきた。それだけに1年延期という事実は、私たちが思う以上に落胆は大きかっただろう。
ただ、なでしこジャパンの司令塔として、メダル獲得が期待される23歳には、一線を画す価値観がある。「自分はオリンピックでモチベーションを保っていたわけではないので」と言う。それは、なでしこリーグに活躍の舞台があるプロ選手だからとか、W杯というもう一つのビッグイベントが存在するからとか、そういう環境的背景に起因するわけではない。
長谷川は「もちろん、目標という意味では五輪もW杯も大切に思っています」と断った上で、真意を明かす。
「もし五輪、W杯がなくても毎試合、課題が出たら修正する練習を1週間していく。そうやって、上手くいかないことがどうしたら上手くいくかを考えて取り組んで、次の試合で結果が出ると嬉しいし、その瞬間が楽しい。だから五輪、W杯という目標が目の前からなくなっても、練習が毎日楽しいので、そこまで落ち込まないというか……毎日の練習がモチベーションになっているんです」
その声色に、奇をてらうような意図は感じられない。本心で口にした「毎日の練習がモチベーション」という言葉。五輪という特定の目標にメンタルが依存しない理由は、ここにある。
ベースにあるのは、サッカーは人生の目的ではなく、サッカーは人生を充実させる手段という考えにあるのではないか。本人は「確かにそうかもしれない」と納得したように、頷いた。
「正直、サッカーそのものの何が楽しいかと聞かれても、明確な答えはあまりなくて……。ただ思っているのは『考えて、実践する』というのが、自分は好き。考えてみると、上手くいかないことも大事。逆に、全部が上手くいっても楽しくないんじゃないかと思う。その方が成長を感じられて楽しいから。ある意味、サッカーじゃなくても、いろんなことを楽しめるタイプなんです」
目標と成果の大小に、幸せの度合いが比例しない。日々の自分の成長と変化に喜びを実感できる。人生の楽しみ方上手なのだろう。「結構、人生、得していると思います」とは、本人の弁だ。
「実際、コロナの影響で残念という気持ちはあったけど、自粛している期間も十分に楽しめたというか(笑)。もちろん、試合もやりたいし、練習もやりたいけど、こういう状況ならではの楽しみ方はあったと思うんです。なかなかゆっくりできないことが多いので、その分、ゆっくり休めたと。ゴロゴロしながらテレビを見て、なかなかない機会を楽しめたなと思っています」